唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第3章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その2
「俺は軍人の家系だからな。こんな事はお手のもんだ」
 ウォルフの答えはもっと意外で、クラウスはどういう意味か判らず首を傾げた。
「幼い子供の仕事なんだよ。剣の扱いを学ぶ前に、先ずはナイフの扱いを学ぶ。
食事の時間は家族一緒だからな。少し上手くなったら、客への料理でもそれを披露する。そして剣の練習へと入る」
 ウォルフは遠く過去を思い出す懐かしい瞳で語った。
「どうぞ」
 恭しく言い、クラウスの目の前に上品に盛りつけられた肉や野菜の乗った皿を差し出した。
 促されるまま、クラウスは美味しそうな香りを立ち上らせる肉を一切れ口に含んだ。
 まろやかで甘い脂をまとった肉は柔らかい。
 数口噛んだだけで口の中で溶けて無くなっていく。
 絶妙な塩加減と香草の香りをまとい、この世のものとは思えないほど美味しかった。
 すぐに二切れ目に手が伸びる。
 口に入れると溶けていく。
 得も言えぬ至福のひととき。
 今までの人生の中で、五指に入るくらいのご馳走なのではないだろうか。
 クラウスは頭の隅のほんの少し残った冷静な部分で、そう思いっていたが、すぐに食べることに夢中になって他の事は考えられなくなっていった。
 皿の肉が消え、付け合わせの野菜を口に入れる。
 ふと。自分を見ている視線を感じた。
 顔を上げずに隣を見ると、隣の皿の料理はほとんど手をつけられておらず、フォークを持つては止まったままだ。
・・・ガツガツと食べている姿を見られた?
 ウォルフのことも忘れて食べることに夢中になっていた。
 何だか恥ずかしい。
 何となくウォルフの顔が見れないと思う。
 でも沈黙しているのも変な気がする。
 御馳走を前にして話しをするも何も食事優先なのは、いつもの事。
 特別な客などではないのだから、気にする必要はないはずだった。
 でも今は気になって仕方ない。
 自分で自分の気持ちが判らない。
 残りの野菜に手を出す事も、顔を上げる事も出来ず、動きを止めたまま逡巡していると、肉の消えた皿が消えた。
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