唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第3章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その2
…おれ。何だか変だ。
 自分の変化に戸惑っていると、いつもと変わらない声が降ってきた。
「まぁ。話は後だ。まず食おうぜ」
 ウォルフはナイフを取ると、よく焼けた塊肉に刃を入れた。
 湯気が上がり。切り分けた断面から、肉汁が滴る。
 良い香りがクラウスのところまで漂ってきた。
 口の中に唾液がたまり、無意識に飲み込んだ。
 空腹感が舞い戻ってくる。
 目の前でナイフは流れるように舞い、肉は丁度良い厚みに切り分けられ、小皿に収まった。
 それは一瞬もためらう事のない淀みのない動作。
 まるで料理店で肉を切り分けたり、料理店での経験でもあるような、見事なナイフさばきだった。
 外の仕事が多かったのか、彼の手はほとんどの部分が日に焼けた肌色をしていた。
 その中で小指の付け根の部分は全く焼けずに白く残っている。
 常にはめていた指輪を、つい先ほど抜いた後のよう。
 クラウスは旅先で出会った高貴な人々を思い返した。
・・・剣の邪魔にならないようにはめた、封蝋の指輪の跡か。
 庶民には関係ない事だが。身分の高い者は、手紙を出す際、封印の蝋の上に家紋の印を押す。
 それでもらった者は手紙を開ける前に、どこに家のものからきたのか判るようになっている。
 印は指輪の上につけているデザインが多い。ウォルフもそうなのだろう。
 普段は指に身につけ、必要に応じて使用しているのだろう。
 今日つけていないのは、身分に関係なく祭りに参加したいという思いの現れだろうとクラウスは思った。
・・・でも、だったら。どうしてこんなにナイフ使いが上手いのかな?
・・・こんな下々のするような事。
 クラウスは、ふと不思議になる。
 彼は日常生活においては、座っているだけですべての事を使用人がしてくれるはずだからだ。
 それとも、クラウスが思ったほどウォルフの家は豊かではないのかもしれない。
 意外と苦労しているのかも。
 そんな事を考えていると、頭上から声がした。
「意外だって顔している」
 ウォルフにはクラウスの考えているが判ったようだ。
 そんなに顔に現れていたのだろうか。
「うん。こんな事とは無縁だと思っていた」
 こんな言い方失礼だっただろうかと思いながらも、素直にうなずき顔を上げると、ウォルフの笑い顔が目に入る。
 特に気を悪くしている訳ではない表情を見て、クラウスはホッとした。
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