唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第3章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その2
 店員はにこやかな笑顔を張り付かせ愛想を振りまいている。
 器用な事に手にジョッキを持ったまま、腕には四枚の料理の入った皿を乗せている。
 頼んでいた料理と追加の酒を持ってきたのだ。
 店員が注文した料理を確認させるようにウォルフの前に皿の中を見せ、彼が鷹揚にうなづくのを見て テーブルに置く。
 彩りの良い、湯気をあげた熱々の料理が並ぶ。
 目の前、テーブルの上がいっぱいになった。
 強い黄色や濃い赤、深い緑色した鮮やかな野菜のグリル。
 香ばしい焼き色をした大きな肉の塊。
 香草と一緒に焼かれた海の幸。魚や海老や貝が躍るように盛り付けられていた。
 クラウスは目の前の料理に釘付けになっていた。
 店の自慢料理で、値段の高いものばかり。
 祝いの席で振る舞う料理たちだ。
…去年よりも数段、豪華かも。
 クラウスは去年の事を思い出していた。
 金持ちの道楽に付き合った見返りとして、良い思いをさせてもらったのだが、料理だけ比較するとコッチの方が格段に良い。
…案外、出遅れてラッキーだったかも。
 もしウォルフが来る前に酒場に入って、今夜の相手を見つけていたら、こんな事にはならなかっただろう。クラウスはしみじみ思った。
 口説き落す事に夢中になって、クラウス自身ウォルフと話しをしようという姿勢にならなかっただろう。そう安易に想像できる。
 ウォルフが注文をしている時には気づかなかった。
 そう言えば「あれ」とか「それ」とかの指示語が多かったと今にして思う。
 事前に打ち合わせていたのだろう。
…でも、どうして?
 いつもと違うというのは判る。でもそこまでする理由はクラウスには判らなかった。
 気になったけど、理由を考えようとして止めた。
 腹が派手な音を立てたからだ。
 食事を中断していたから、胃が抗議の声を上げたのだろう。
 腹の音が聞かれたかと思い、恥ずかしそうにウォルフを見た。
 いつもならばこんな時からかうのだが、ウォルフの顔にはからかいの色は無かった。
 爽やかで穏やかな笑顔を浮かべている。
 見慣れない表情に鼓動が跳ねた。
 フワリと体が浮くような感覚をクラウスは覚え、さっきまで空腹を感じていたのに、お腹いっぱいな気持ちになってきた。
 ウォルフの顔を見ていられなくて、俯く。
 突然の変化にクラウス自身が驚いた。
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