唄う鳥・嘆く竜(前編)
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第3章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その2
「今でも多く唄う歌だよ。一番人気は恋愛の唄だけどね。『嘆きの竜』は年を取った男性に受けるし唄う場所を選ばない曲だからね」
 クラウスは唄の後半を爪弾いた。
 やや低音から高音へ、流れるような哀しい旋律を弦の伴奏に合わせ、クラウスは朗々と唄う。
 王は死に際して、嘆き竜は自らの力を封印して国を守護する力に変え、永き眠りにつく。
 五百年の永き眠りの後、嘆きの竜は蘇り、王国は新しく生まれ変わる。
 情緒的で甘美なメロディ。
 余韻を残すように声を震わせ。クラウスは儚い夢のような情景を歌い上げた。
 唄の中の世界は美しい。何度唄っても飽きないほどに。だけど…唄の世界と現実は違うとクラウスは判っている。
 唄い終わると、ウォルフは「お見事」と賞賛を送り、自らのジョッキを煽った。
 店員に酒の追加を注文すると、ウォルフは声を落としてクラウスに告げた。
「その五百年後なんだよ。今年が…」
「『嘆きの竜』が蘇る?」
「そう」
 クラウスの言葉にウォルフは真面目な顔をして頷いた。だが、クラウスには俄かには信じがたい事だった。
 たちの悪い冗談だと、自分を引っ掛けようとしていると言われた方がしっくりする。
 その位、現実味が無かった。
「でもこれって神話だよ。夢物語としては美しくて哀しくて、良い話だけど…だいたい、竜なんて存在しないじゃないか。想像上の生き物だよ。吟遊詩人のおれが信じているならまだしも、国家を守る騎士がそんな発言するなんて」
 クラウスが胡乱な目を向ける。
「まぁ…俺だって、その歌の内容を全面的に信じている訳じゃないさ」
 ウォルフは肩をすくめて答えた。
「俺の場合。問題はそこじゃない」
 ウォルフが大きくため息をつく。
 いよいよ話の本題に入るのか…クラウスが身構えウォルフが口を開いたその時。
 彼は突然顔を上げ、姿勢を正すと自然な笑みを作り口をつぐんだ。
 何事が起こったのか判らないクラウスは、彼の視線を追った。視線の先には誰もおらず、気配もない。 不思議に思っていたが。
 すぐに料理場との仕切りを越えて、奥から店員が現れ、こちらへ近づいてきた。
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