唄う鳥・嘆く竜(前編)
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発行者:行之泉
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:唄う鳥・嘆く竜

公開開始日:2010/07/17
最終更新日:2010/08/08 22:41

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唄う鳥・嘆く竜(前編) 第3章 【 収穫祭 】酒場にて ~ ウォルフ ~ その2
「えっ…『嘆きの竜』って……」
 馴染みのある単語を耳にしてクラウスは驚いた。
 食べかけを皿に戻すと、手についたパンくずを払い、体をよじって背負った皮袋に手をかけた。
 小ぶりの絞り袋の中から、竪琴と小さな布の袋を取り出す。
 布の袋はテーブルの上に置き、クラウスは竪琴を抱えると、なめらか手つきで弦の上に爪を当てる。 彼の持ち歌である古い伝説『嘆きの竜』の一節を爪弾いた。
「これ?」
 手に馴染んだフレーズを弾く。
 クラウスが確認を取るようにウォルフを見つめる。
「それ」
 視線の先でウォルフは、懐かしいものを見るような瞳で見つめ返し、笑った。
「昔、お前が唄ってくれたよな。建国の物語。初代の国王アーロンと、王と契約した竜の話」
 『嘆きの竜』は、その竜の名前だ。
 思い返せば、クラウスがウォルフに初めてこの唄を聞かせたのは、初めて出会った日の夜の事だった。
 クラウスが独りで各地を巡るようになって初めての年の事だ。
 客相手の会話もまだ未熟で、祭りで口説き相手への甘い囁きなど夢また夢の時期。
 気まずくなった会話を、唄で繋いだ時の事だ。
 あの時、隣に居るウォルフも今のような軽い色男じゃなかった。
 姿かたちは一見逞しくなった以外に変わりはないが。よく見ると違う。
 育ちの良さそうな真っ直ぐな目をした、ややお堅そうな青年だった。
 今のクラウスなら落すのが楽そうな客と見て、すぐに白羽の矢を立てそうな感じだ。今のウォルフから以前の彼は見る影もないが。
 今は見た目は爽やかな好男子でも、柔らかな瞳の奥に剣呑な光を灯している事も多い。
 笑って軽口を叩いても、実は良く考えて言葉を発している事がよく判る。
 まぁ、今のクラウスにしても百戦錬磨とは言わないが、食わせ者であることは同じだ。
 色々とヤバイ状況を潜り抜けてきた。
 何度も騙されたし、哀しい思いもしてきた。
 そんな中で人を見る目と、場の空気…気配や雰囲気を読む事を培ってきた。
…あれから何年も経ったんだなぁ。 
 クラウスは何となく感傷的な気分になった。
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