愛しき国の調べ
第1章 プロローグ~女王陛下の血を引く者~
ブロッサム王国とクリアリル帝国。隣接する二つの国は、国境をめぐって古くから争いが絶えなかった。夫君に先立たれたブロッサム王国を治める女王に子はなく、また、クリアリル帝国を統治する皇帝は病で伏していたが、皇太子が二人あった。第一皇太子は結婚していたが、第二皇太子は、未婚であった。国境の小競り合いが大戦に変わろうとしていたとき、ブロッサム王国を探っていた第二皇太子の従者が、ある情報を仕入れる。なんと、後継者がいないと思われていたブロッサム王国の、前の代の女王のご落胤が下町で生活しているというのである。クリアリル帝国の皇帝は、チャンスとばかりに、ブロッサム王国に打診した。その娘を第二皇太子の妃に貰えないか、と。戦に疲れ切っていたのはブロッサム王国も同じだった。女王は苦い表情でクリアリル帝国の使者に告げた。「しばらくブロッサムの王宮にあげ、教育してからなら、諾」と。
使者の返事に、皇帝は喜んだ。さっそく第二皇太子を大使として派遣した。曰く「自分の目で、見極めてこい」
ブロッサム王国とクリアリル帝国の間で休戦の協定が結ばれたのである。
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