俺様王子の恋愛街道
第4章 第三章、俺様王子と光の君
朝食はたっぷり身の詰まったベーグルサンド。ブルーベリーのジャムと山羊のような癖のあるチーズが挟んであり、食べやすいように半円にカットされていた。飲み物は白いミルクのようなもの。ウォーレンは、最後に用意された、柔らかい感触の葉っぱをナプキン代わりにすると、テーブルを見渡した。皆がおもいおもいに話をする中で、ウォーレンは適当に相打ちをしながら、木々のざわめきに耳を澄ませて、気になる音を見つける。さわさわという葉の擦れる音に混じって、シュッ、シュッという、何か空気を切る摩擦音が聞こえるのだ。トールに目配せすると、トールも怪訝そうに眉根を寄せた。
メイヴィットに問おうと、顔を向けた瞬間、シーニィの歓喜の声に阻まれた。
「カロちゃ~ん。おっそいわよ~。アタシたちもう済ませちゃったわよ」
枝のアーチの向こうから現れたのは、中肉中背の女性。肩に着く程度のストレートな髪は、木の幹を濃くしたかのよう。髪と同じ色の瞳がウォーレンを捕らえた。
「構わない。フィーリーへようこそ、スタッピアの友人方。どうぞゆっくりしていって下さい。メイ」
表情の読めない顔が、ウォーレンから視線を外した。ウォーレンの背を冷や汗が伝う。
「遅くなってすまない。良くない事実を告げる託宣が出て占い直したら、こんな時間に」
「大丈夫じゃ、カロ」
メイヴィットが立ち上がる。ウォーレンもつられて、席を立った。
「紹介しようぞ。こちら我が国の参謀。占いを生業としておられる」
「初めまして。カロ、とお呼び下さい」
「よろしく、カロ殿。私のことはウォーレンと。こちらは従者のトール」
「カロ様。よろしくお願いします~」
平生を装って自己紹介をしてみたウォーレンだったが、やっぱりカロは眉ひとつ動かさない。
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