俺様王子の恋愛街道
第3章 第二章、俺様王子とフィーリーの使者
「とても疲れているのね。普段のアナタのお守りと、夜もあまり寝てなかったみたいだし」
言われてみれば、とウォーレンは思う。トールの眠っているところを見た事がない。いや、あるにはあるのだが、彼は視線を感じるのか、直ぐに目を覚ましてしまうのだ。
それを当たり前のように感じていたウォーレンだったが。
「まあ、主人の前で熟睡する従者は言語道断だけれどね」
(借りは作りたくなかったんだが)
先程のことといい、今気づかされたことといい、まだまだウォーレンが気付いていないだけで、トールはたくさんのことから守ってくれているのかもしれない。
ウォーレンたちの視線に気づいたのか、トールが身じろぎした。ゆっくりと顔を上げ、ウォーレンを見て、慌てたように立ち上がった。トールのそんな立ち振る舞いは、普段滅多に見られない。
「申し訳ありません、殿下。いつの間にか深く眠ってしまったようです。いつもはこのようなことはないのですが、この不思議な空間のせいでしょうか」
不思議な空間。トールの言葉に、ウォーレンは納得する。
ウォーレンたちが休息を取っていたのは、エルフの道に入ってから、半刻程歩いた場所で、さらにシーニィが結界を張った中だ。
結界を張る必要性についてウォーレンが尋ねたところ、シーニィは「安眠のおまじないよ」と淑女のようにころころと笑ってみせたのだ。
結界が功を奏したのか、ウォーレンはぐっすりと眠りに引き込まれたのを思い出す。
「悪いトコロだけじゃないでしょう?」
シーニィがウォーレンの隣で微笑んだ。
「魔法にもいい使い方はたくさんあるのよ」
「何か食べる?」と訊かれて、ウォーレンはお腹の空腹感を自覚する。
だが、ここで食べるのはウォーレンのプライドが許さない気持ちがあった。しかし身体は正直だった。きゅるきゅるきゅると確かな音が、ウォーレンのお腹から鳴る。ウォーレンは穴を掘って埋まりたくなった。
「戴きましょう、殿下」
トールの言葉に、ウォーレンはしぶしぶながら頷く。このまま断っても、意味のないことをウォーレンは自覚した。シーニィを見れば、やれやれ手のかかるヒトねえ、と声が聞こえてきそうなくらい、苦笑いを浮かべていた。
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