俺様王子の恋愛街道
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発行者:かぼし冬佳
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2013/02/09
最終更新日:2013/02/09 18:45

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俺様王子の恋愛街道 第2章 第一章、俺様王子と不機嫌の種
「殿下」

「がー!」

 ウォーレンは唸った。いや、吼えた、という方が正しいかもしれない。手元にあった、カップを後ろに向かって投げた。お気に入りの、というのは、王が使用した時点で、ウォーレンには過去のことだった。ガチャン、と陶器の砕ける音がした。

「あの、ぼんくら! 変態! 昼行灯! クソっ」

 ウォーレンは、分厚い辞書を両手で抱えてその場でぐるぐると回る。勢いをつけて、放り投げた。ばさっ、とページの割れる音がしたが、ウォーレンは気にしなかった。視界の隅に、飛んだ本を避けるトールの姿が映る。

(ちっ、どこまでも、器用なヤツめ)

 ウォーレンは、執務室から寝室に続くドアを開け、壁に立てかけてあるサーベルを抜く。そのまま寝台に上り、枕の真ん中を切りつけた。ブスっ、と、布の切れる音がして、ふわり、と羽毛が辺りを舞う。

(夏に見る雪景色か)

 ウォーレンは、それも悪くないと思った。サーベルを脇に置くと、枕を両手で掴み、左右に力一杯、引っ張った。派手な音を立てて、中身が弾ける。
 真夏のスタッピア。乾燥しているので、湿度は低いが、気温は高い。三十度を越せば、汗も滲む。
 ウォーレンのべたついた肌に、羽根が張り付く。鼻がむず痒くなってくしゃみが出る。弾みで羽毛のカスを思いっきり吸い込んでしまった。げほげほとウォーレンは咳き込む。

「あー」

 気持ちが悪くなったので、ウォーレンはベッドに仰向けに寝転んだ。夏の雪が舞う。ひらひらと降る様子を無感動に眺めた。

「殿下?」

 ウォーレンは目だけで声を追う。トールが呆れたように、戸口に立っていた。

「気は済みましたか~?」

沈黙の肯定。なんとなく罰が悪い。ウォーレンが、返事のような気の抜けた声を出すと、侍女を呼ぶ、ベルの音が聴こえた。
 ウォーレンは起き上がって、寝室を見渡した。散らばった羽毛が淡雪のように積もっている。ウォーレンは確かに、と一人で頷いた。

(片付けなければ、今夜は眠れないな)

 頭の底で思った。



第一章、俺様王子と不機嫌の種、完
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