Johann,-ヨハン-
第1章 遭遇
「貴様を利用させて貰った」 魔族の男が言った。
「ギデオン・デュ・ゲクランを殺すには、隊舎内に侵入する必要があったんでな」
ギデオン副隊長が死神に首を切り落とされる光景が浮かぶ。吐き気がする。
「ギデオン副隊長も、お前が‥?」
「そうだ」 微動だにせず告げる。
「一体どうやって‥。あの死神は‥?」 守護隊舎内に誰にも見つからずに進入するなんて不可能だ。それに、あの時は間違いなく僕とギデオン副隊長、それと兵士が2人しかいなかった。
「貴様も一緒に殺すつもりだったが、その前に聞きたいことがある」
男は僕の質問には答えず、冷たく言い放つ。僕は唾を飲み込む。
「聞きたいこと?」
魔族の男がニヤリと笑う。 「何故俺のことを話さなかった? 警備兵を殺すところを見ていただろう」
容赦のない視線に射竦められ、身体が震える。 「‥その質問に答えたら、僕も殺すのか?」
「答えなくても殺す」
――何で僕がこんな目に‥。あの時、図書館に忍び込んで、見てはならないものを見てしまったからなのか‥?
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