Johann,-ヨハン-
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発行者:KEI
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2013/01/25
最終更新日:2013/01/25 20:09

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Johann,-ヨハン- 第1章 遭遇
 「成績優秀な君なら、聖都守護隊の前身を知っているだろう」 ギデオンがおもむろに葉巻を咥え、僕に尋ねた。
 「‥十字軍。魔族討伐軍です」
 「その通り。我々ヒューマンのかつての仇敵。互いの存続をかけ、血で血を洗う闘いを繰り広げた。そして激闘の末我々は勝利した! 犠牲は大きかったがな‥」
 僕は沈黙する。突拍子もないことを聞かれたからではなく、予想していた通りの話題だったからだ。
 初老の男は半分になった左腕を擦る。 「犯人は魔族の生き残りの可能性がある」
 「魔族は絶滅したと習いました」 下等教育の教科書にも記載されていることだ。十字軍と魔族軍があらん限りの勢力をぶつけ合い、雌雄を決したのだ。この戦争はヒューマンの間では「聖戦」と呼ばれている。
 「そう思っていた。しかし、生き残りがいる可能性が出たのだ。君は犯人の姿を見たんだろう?」
 ギデオン副隊長が重ねて僕に尋ねる。僕は口をつぐむ。
 「魔族の特徴は暗闇でも周囲が見えるよう発達した紅い瞳だ。闇の中で紅く光る。君はそれを見たんじゃないかね?」
 「僕は何も知りません」
 「君は隠し事をしている。犯人を庇うのは反逆罪だ! 連れて行け!」
 ギデオン副隊長が兵士に号令を飛ばした。
 僕を取り押さえようと兵士が槍を構え、近づいて来る。
 すると突然、僕とギデオンの間の空間が歪み、暗闇の中からゆっくりと『それ』が現れた。
 ぼろぼろの黒いマントを羽織り、フードを被っている。ギデオンの方を向いているため、顔は見えない。
 強烈な腐敗臭。鳥肌が立ち、本能的な恐怖が全身を貫く。
 ――何かわからないけど、やばい、‥逃げなきゃ、殺される!
 暗闇から現れた『それ』は徐々に形を成すと、両手に持っている鎌を振り上げ、ギデオンの首を切り落とした。
 「うわぁああああ!!」 「化物だぁぁ!!」
 続けて『それ』は、逃げようとドアを開けた兵士の首をはね、腰を抜かし失禁している兵士に覆い被さるように覗き込む。
 僕は震える脚を何とか動かし、執務机の下に潜り込んだ。
 鎌が空を斬る音。続いて、血飛沫が上がる音。
 僕は震えながら眼を瞑り、祈る。 
 『それ』が僕を覗き込む。
 フードの下の骸骨。眼窩に光る赤い眼球。
 その映像を最後に、僕の記憶は途切れた。
5
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