Johann,-ヨハン-
第1章 遭遇
豹型クリーチャー―ヒューマンの分類によれば―特有の強靭でしなやかな筋肉は、足場の悪さをものともせず、2人の身体を集落の北へと運ぶ。
ヂードゥ族の集落は、聖都の東側に広がる森の南部に位置する。森には様々な種類のクリーチャーが生息しているが、ヒューマンの言葉を理解するクリーチャーは上級クリーチャーと呼ばれ、昔からヒューマンと交易を行なってきた。ヂードゥ族も、野生のクリーチャーを手懐けヒューマンに提供するなど、友好な関係を築いてきた。しかし、ヒューマンから突然攻撃を受け、集落は壊滅したのだった。
「ここまで来れば大丈夫だろう」 集落から15kmほど離れた湖で、2人は脚を止めた。
クインは周囲の樹木に付いた刻印を調べる。 「この辺りはドレイクの縄張りだわ」
「事情を説明して協力してもらおう。彼らは助けになる」 そう言って、ガルーザはクインに歩み寄る。
ドレイク族は、ヒューマンの分類によれば魔虫型低級クリーチャーだ。蜥蜴のような姿で、猛毒を持つ。擬態が得意で暗殺に向いているため、手懐けてヒューマンに提供することもあった。
「‥ガルーザ!上よ!!」
クインに呼ばれ、空を見上げると、夜空を覆い尽くす巨大な物体が2人の真上を飛行していた。
「何だあれは―‥」
次の瞬間、爆音と閃光がガルーザの視界を覆った。
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