孤島の垂涎
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発行者:千華
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2013/02/21
最終更新日:2013/03/02 21:44

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孤島の垂涎 第2章 飛行機の旅。クロードとセルジュ。
「兄さん。人にあたらないでよ。
すみません。この人、飛行機が怖いって駄々こねてたんですよ」
「駄々なんかこねてねぇよ!! あの女が変な顔して俺らの方見るから!」
「兄さん」

弟に制され、面白くないと顔を歪める兄。
深く座席に身を委ねて、チッと舌打ちをしている。

その様子は、ここ数カ月で何回か体験した記憶がある。
両親の葬儀で、手際の悪い姉妹に舌打ちをしてくる遠縁の親戚。
体に鞭を打つように動いたつもりだが、やはり動きや段取りが悪かったのだろう。
待たされたり、聞いていた日程と違っていたり、そういうのが重なり、迷惑をかけた。

あの時と同じだ、とフラッシュバックする葵の手が、微かに震えている。
立ち直ろうとしていた葵にとって、他人との交流はまだ怖い。
マイナスのイメージを抱かれると尚、身がすくむ。
しっかりしようと握った手に、さらに力を込めてみる。
幸い、妹は気づいていないようだ。

「すみません。髪の色がとても綺麗で、ついお姉ちゃんと見てしまって」
「こちらこそすみません。そちらも姉妹で来たんですか?
お姉さんの顔色、あまりよくないようですけど……」 
「はい。お姉ちゃん、車と飛行機が苦手で、早速酔っちゃったみたいなんです」

兄と姉を差し置き、年下組が会話を始める。
一方の年上組は、お互い酔っているせいか、結構険しい顔をしているはずだ。
地獄にいるような表情の兄と姉を放置し、紫達は会話を弾ませていた。

「薬は飲んだんですか?
もしまだなら、これをどうぞ。
空腹でも水がなくても飲めるタイプなんです。兄にも先ほど飲ませたんです」
「わぁ。有難う御座います!
お姉ちゃん、これ食前でも大丈夫だって」
飲んで? と、薬をつまんで口元まで運ばれる。
ほぼ無意識に口を開けてしまい、真っ白の錠剤を舌の上に乗せた。
すると、僅かな唾液で薬はあっという間に溶け始め、喉の奥へと消えていく。
調子がいい事を言っているのは分かるが、なんとなくスッキリしてきた。

「ありがとうございます。なんか、スーッてなってきました」
「よかった。あ! 僕セルジュって言います。こっちは兄のクロード」
ホッと胸をなで下ろすセルジュの、なんと優しいことか。
舌打ちされた後の親切は、葵の心にジーンと染み渡った。
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