孤島の垂涎
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発行者:千華
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2013/02/21
最終更新日:2013/03/02 21:44

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孤島の垂涎 第2章 飛行機の旅。クロードとセルジュ。
だがそれ以上に辛そうな顔をしたのは、
意外な事にセルジュだった。
隣に座るクロードでさえ、先ほどまで動かしていた体をピタリと止めてしまう。

「そう、でしたか。
こう言ってはアレですが、実は僕たちも両親を亡くしたんです。
――奇遇、と言うんですかね」

セルジュは困ったように笑い、お互い参ってしまいますよね、と首を傾けた。
今度は葵たちが固まってしまい、なんと声をかけるべきか悩まされる。

まさかこんな近くに、こんなに似た境遇の人間と出会えるとは思わなかった。
普通ならお悔やみの言葉でも述べるのが一般的だが、
そんな慰めは4人には不要だった。
互いの悲しみを理解しているからこそ、言葉はいらない。
だからこの件に関して、余計な口を開く必要はどこにもなかった。


なんとなく湧く親近感を覚えたところで、
セルジュが立ち上がって紫の隣に座る。
元々空席だったので、誰かが座る事もない。
目的地も同じだし、気兼ねなく着席していい。

「ちょ、おい! セルジュ」
「葵さん。紫さんの事、少し借りてもいいですか?
僕、彼女と色々話がしてみたいです」
「へ? ど、どうぞ?」
「よかった。あ、よければ葵さんは、僕の席にでも座って下さい。
あんな兄でも、話し相手くらいにはなれますから」
「セルジュ!」

いきなり積極的な行動を見せるセルジュに驚いたが、
お国柄なのか、恥じる様子もなく紫との会話を楽しんでいる。
年が近いのもあるかもしれないが、
紫も戸惑いつつも楽しそうにお喋りしているし、邪魔するのも無粋だろう。

クロードの隣がぽっかりと空いてしまったが、そこに座るつもりはない。
喧嘩になるのは目に見えているし、わざわざ座る義理もない。

座席に備え付けられている音楽でも聞こうかと、
葵はヘッドホンを取り出す。
眠って到着を待とうとした葵は、
最後に一言声をかけるかと紫に目をやった。

――が、彼女の顔は今までにないほど赤く染まり、
俯いて必死に、小さな声で喋っている。

原因はセルジュの積極性にあり、
紫の手を上からソッと握り、かなりの近距離で何かを囁いている。

一見すると、付き合い始めたただの恋人同士と、
うっかり隣に座ってしまった気まずい一般人だ。
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