PC売り場の誘殺(番外編・お喋りとミニ話)
第6章 ミニ話・「メリークリスマス!」
あぁ、このボリューム。この温もり、この柔らかい弾力。男子は天国に導かれる。
「あの……」香が困っていると、頭がキレた彼女が歩み寄る。
「おっさん! 何をエロい事やってんだよ」と、怒る彼女は彼氏の髪の毛を掴んで谷間から離させた。しかし香の胸に顔を埋めた男子は、幸せが残っていて目が細い。だから彼は、細い目で自分の彼女に言ってしまう。
「メリークリスマス!」
その瞬間、彼氏は顔面にビンタを食らい、地面に倒れたら頭を踏まれてグリグリされ大声で罵倒されていく。ろくでなしと。
そして雪が降ってきた。クリスマスを飾る雪だ。人々に寒さとロマンティックな気分を与える雪だ。
彼女は彼氏の後頭部を踏みながら、一度は許そうかと思った。でも近くにいるサンタの胸を見たら、怒りが再熱するからかなり強く踏みつける。彼女にすれば裏切られたと思っている。彼女にすれば、白い雪はロマンスではなく裏切りの白。
やっと踏まれていた彼氏が立ち上がった。頭を抑えながら立ち上がったら、鬼のような形相の彼女に問われる。私とサンタとどっちが大事なのか言ってみなさいよと。
「絶対サンタさん!」
不覚にも彼は言い間違えた。そのせいで去っていく彼女を追いかけなければいけない。待ってくれと切ない声が周囲に響く。待ってくれ・待ってくれと、天国から転がり落ちた声。
寒いからそろそろ中に入ろう、そうつぶやいたサンタクロースは白い息を吐きながら温かい店に向かっていく。 店の外に置いてあるラジカセが音楽を鳴らしているが、それに合わせてサンタが口にした。
「メリークリスマス・フォー・ユー」
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