PC売り場の誘殺(番外編・お喋りとミニ話)
第6章 ミニ話・「メリークリスマス!」
今日はクリスマス。お店はクリスマスカラーに染める。そのあげく、店員がサンタクロースに変装する。本来それは男のやる仕事のはずなのだが……
店長の信也は2つの理由でサンタクロースは女子がやるべきと話を回したのだった。半分は逃げで、半分は悪意。
まず自分がやりたくない。信也はサンタクロースのコスプレなど変態みたいでイヤだと思っている。
で、可愛い女の子がやるなら絵になるし許してもらえると考えた。彼とすれば恋焦がれるボインな香にサンタクロースをやって欲しいのだけど、指名すると香が嫌がるのは見えている。だから女子全体に押し付け、香が引き受けて欲しいと神さまにお願いしている。
更衣室に女子たちが集まっている中、明美が言い放った。
「そりゃぁ藤本先輩でしょう、決まりですよ」と。
両腕を組んでAカップの胸に当てると、斜に構えて香の胸を見る。その豊かで柔らかそうなIカップのふくらみ。それこそサンタクロースでしょうと、かなり意地悪く蔑んで見せた。
「おっぱいの大きさがサンタクロースに関係あるか! それに前のボタンを綴じたらおっぱいの大きさとか分からないから、誰がやっても一緒。Aカップの明美でもいいんだよ」
香が不機嫌そうに言い放った。彼女は久美の方を見て、是非とも同意して欲しいと表情に出す。でも裏切られた。頭をかきながら久美は、サンタクロースは藤本さんが似合うとか言い出したからだ。
「藤本さんって顔がふっくら輪郭で可愛いじゃない。その方がサンタクロースに合うと思う。藤本さんが一番可愛いよ、本当に」
らしい。小幡久美の主張が鶴の一声。決まってしまった。香は信じられない事にサンタクロースのコスプレ。不本意で屈辱。何が悲しくてサンタクロースの格好なのだろう、親にも親戚にも友達にも見られたくないと思ってしまう。
14