ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
完結
発行者:武上 渓
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ジャンル:SF

公開開始日:2013/12/17
最終更新日:---

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ソングライター ホシオカ ー陸奥篇 第7章 収束
「山際さん。私に発言させてもらえますか?」
「篠ノ井教授どうぞ」
「陸奥の文書は、結論の出しようがない。これからの研究の結果を待つと言うのが私の見解です。よって、遺体の調査結果による結論もそれを待つ事になります。私とチームはその日の為に、調査を続行します。稲沢君は、陸奥の文書の解析を行なう。それで、稲沢君に納得してもらいたい」
「わかりました。定説の固定化を回避できるのなら異議ありません」
「他に質問は?」
篠ノ井教授は会見場を見渡して、危機を脱した事を確認した。


星岡と理香子が、この記者会見の話を知ったのは、高知で坂本龍馬の納骨式が行われた墓地だった。刀創の無い遺体が墓地に収まり、久利坂の任務は無事終了した。
「久利坂さん。お疲れさまでした。しかし、記者会見は危なかったですね。その場に居なくて良かった。心臓がもたない」
「星岡さん。さすがに手が震えました。万全は期しましたが、山際正義って言うフリーライターは、油断できない。何度も瀬戸際まで追い込まれてます。篠ノ井教授のおかげです」
理香子は、全国の龍馬ファンによって建てられた墓を見ていた。
幕府の軍艦に衝突して沈んだ、いろは丸を型どった墓石の中に、特例で火葬されずに、遺体は納められた。
「いつか、この遺体は調べられて、稲沢さんと篠ノ井教授の調査結果から定説はくつがえる。その時には私達は生きていないかも知れないね」
「理香子。その時に生きていたいか?陸奥は俺達の事まで、ご丁寧に書き残しやがった」
用心深い陸奥は、称名寺と同じ文章を、坂本龍馬の襟に縫い付けたのだ。
「良いじゃない?本当に有って、私達や久利坂さんが見た事だから。司馬遼太郎さんが知りたかった事を、久利坂さんは見て、私達も聞いた」
「多少歴史改変したがな…」
「星岡さん。それは大した問題じゃない。歴史的事実が未来に対して保存された。未来の歴史家に対して、空白を埋めた。それは…」続きを理香子が続けた。
「…未来の人々が、戦争を始めとする過ちを犯さない道標になる」
久利坂も星岡もうなずいた。
きっと、坂本龍馬も陸奥宗光もうなずいてくれると…理香子は信じた。


ソングライターホシオカ
陸奥篇 完結
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