ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
完結
発行者:武上 渓
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ジャンル:SF

公開開始日:2013/12/17
最終更新日:---

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ソングライター ホシオカ ー陸奥篇 第4章 近江屋決行
「中岡さんはこのままか?」
「中に運ぶ。白川屋敷の谷干城たちが第一発見者になる。彼が揉み消しをやってくれる。とりあえず、近江屋が上に上がって来ないようにして、谷たちを迎え入れよう」

久利坂は、小谷と中岡慎太郎を裏八畳間に運び坂本龍馬の隣に寝かせた。階段を降りて行くと近江屋が上を伺っている。
「新助。戻って朝まで部屋に居ろ…それで万事上手くゆく」
小谷に凄まれて、近江屋新助は引き下がった。
土間に降りて、久利坂は小谷と戸を潜って外に出た。小雨の中を行くエエジャナイカの行列を暫く眺めていると、谷干城と田中光顕に白峰駿馬が現れた。
「陽之助に聞いた。ここは任せろ」
谷の言葉に小谷はうなづいて、久利坂を促した。三人は滑るように、近江屋の中に吸い込まれていった。


河原町を北に歩きながら、小谷は段取りを久利坂に伝える。
「酢屋の船入から伏見に下る。伊達陽之助はもう舟に居るはずだ。急ごう」
小谷は早足になった。一刻でも京に居るのは危険だ。しかし、久利坂はもう任務を果たした。この時代に居る理由は無くなった。ただし、気掛かりが有った。
「毒殺は見抜きやすい。隠し通せるか?」
「谷が土佐藩を後ろ楯に、新撰組の仕業と言い立てる。奉行所の同心は死体を見る事も出来まい。坂本さんと中岡さんは棺に入れずに裏の寺の五輪塔に隠す。谷たち三人で今夜の内に移す事になっている」
「須田は?」
「谷の事だから、空の棺に重しとして乗せるかもしれん。橋本もな」
久利坂は酢屋の舟入りから、高瀬舟で京を出た。


「橋本久太夫にしてやられた」
陸奥が動き出した舟の中で呻(うめ)いた。
「計り事は、坂の上の岩だ。やめる積りでも風ひとつで動けば、誰も止められない」
久利坂は歌うように言った。陸奥は恨むように久利坂を見た。
「しかし、誰か老中永井と連絡をとらなければならん。慶喜を受け入れてくれるように、エゲレス公使館に掛け合わねばならん。身体が幾つ有っても足りん」
「公使館は任せてくれ。用心棒に幕府の老中はお目見え以下だ」
「坂本さんもお目見え以下だったさ。坂本さんの使いとして行けば会えるだろう。公使館は任せる。二条城は任せてくれ」
そう言うと陸奥は、高瀬舟から堤防にピョンと跳び移った。久利坂の知る陸奥宗光は、最期まで主役を張る人では無かった。むしろ裏方で、計算どおり事が運ぶのを、ソデでほくそ笑むタイプだ。
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