ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
完結
発行者:武上 渓
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ジャンル:SF

公開開始日:2013/12/17
最終更新日:---

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ソングライター ホシオカ ー陸奥篇 第4章 近江屋決行
「陽之助。許せ。須田の役目だ」
須田は
「御免」
とだけ言って、醤油を左手の平に落とした。
「橋本殿の軍鶏漬け醤油は、いかがでごさるか?」
久利坂は、場を和ます為に聞いた。
「ほう?須田。ウマイか?」
坂本龍馬もおどけた調子で合わせた。
「どうだ?」
中岡慎太郎も興味深げに重ねた。
須田は、当然暗殺が始まるのを待っている。それが毒殺なのか刀争なのかは知らない。しかし、醤油は旨かった。
「これは結構な…軍鶏が引き立ちましょう」
その一言で場がくだけた。
坂本龍馬は笑いながら須田に言った。
「鍋が出来上がる頃には、須田に毒が廻る。喰えなくて気の毒だな」
笑い声が上がって、全員が奥八畳間に移った。久利坂は、慎重に須田との位置を取って座った。
坂本龍馬は上機嫌で
「醤油差しを寄越せ。わしも毒見する」
坂本龍馬は醤油を舐めると、中岡慎太郎も醤油を舐めた。
そして、藤吉が醤油差しから鍋に醤油を注いだ。
久利坂と須田だけが、互いの間合いと抜くタイミングを計りなから、目線で駆け引きを始めた。


鍋に蓋がされて、煮え立つのを待つ間、坂本龍馬が陸奥と話し始めた。
「手紙は受け取ったか?陽之助」
「刀の砥(とぎ)の話ですか?」
「それよ。良い話だが今ひとつパークスの心底計りかねる」
「公使館は、正義では動かない。エゲレスの国益に成るか成らぬかで動きます。或いは、公使館と居留地の利害で…」
「どのようにでも豹変するか?」
坂本龍馬は無意識に箸をくわえて噛んだ。
久利坂は、坂本龍馬の最期の手紙を思い浮かべた。陸奥の刀を誉めて、自分の刀は大阪に砥に出してまだ戻らない。戻ったら見せよう…と言った内容の手紙だ。陸奥の刀は、イギリス公使パークスの情報で、龍馬の刀は大阪城の徳川慶喜との交渉と解釈できる。陸奥は先の展開を的確に分析している。イギリス公使パークスは陸奥に武力衝突を望まないと言ったのだろう。しかし、豹変すると。久利坂の記憶では、居留地保護の名目で大阪天保山沖を艦隊封鎖する。慶喜は大阪城を退去できず窮地に陥る。
「メリケンに手配りしたが間に合わん。いっそのことエゲレス公使館に保護させるか?」
「石田三成が家康の屋敷に飛び込んだように?」
「慶喜に手をくだしたら、公使館は幕軍に囲まれ皆殺しだ。エゲレス人はこの国に居られなくなる。さっそく永井に使いを走らそう」
二人はほくそ笑みを浮かべた。
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