ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
完結
発行者:武上 渓
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ジャンル:SF

公開開始日:2013/12/17
最終更新日:---

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ソングライター ホシオカ ー陸奥篇 第4章 近江屋決行
塗り込めた闇の中に星岡は居た。
何か大きな岩の下敷きになるような感覚で、呼吸ができない。
ーしっ死ぬ
声にならない。そのまま意識が闇に消えた。


風の音がする。目を開けると木の枝が闇の中に見えた。痛む首を回すと、墓石が有る。
「高台寺か…最悪だ。あの転送機」
影が動いて、ミリティ姉さんの声がした。
「贅沢言わないの。前回酢屋からここまでマラソンした事思い出してね」
「思い出したくない事。二つの内のひとつ。前回のマラソン、もうひとつがこの転送機。生きてる事が奇跡に思える」
もうひとつの影が言った。
「ユキヒロ。感謝して。ミリティさんが考えて用意してくれたんだから」
「わかった。でも俺の思い出日記からは削除させてもらう」
ミリティ姉さんが黙るように、右手で星岡と理香子を制した。
腕時計型コンピューターから、陸奥の声が流れてきた。



「坂本さん。こちらは久利坂殿…サトウの所で働いておられます」
陸奥は、二階の奥八畳間に向かって言った。陸奥と小谷 橋本は手前の奥六畳間に座っている。久利坂も階段を上がって、三人の後ろに座った。背中には、表六畳間と表八畳間が続いている。
奥八畳間には、行灯の光にボヤット三人の人影が見てとれた。
右は坂本龍馬。向かいに中岡慎太郎、手前の敷居に居る痩せた男が須田礼無ノ助と見た。背中の表六畳間に、藤吉が居るのを座りながら確認した。
「サトウは相変わらずかい?久利坂殿?」
リセットされた世界で、20年聞き慣れた声が響いた。思えば、久利坂はここにいる全員を知っている。久利坂だけが、知られていない。
「主人が失礼な事をしました。お許しください」
イカルス号船員殺害事件で、サトウは坂本龍馬を怒鳴りつけている。
「何…公使館の務めよ。役人は何処も威張らねば仕事が進まん。弱い者達よ」
「痛み入ります。それはさておき、伊達さんが用意の軍鶏鍋を用意しませんか?」
久利坂は、醤油差しを差し出して見せた。坂本龍馬は笑って叫んだ。
「藤吉!鍋をやってくれ」
後ろから藤吉が進み出て、醤油差しと籠を受け取ると、奥八畳の七輪で軍鶏鍋を作り始めた。


須田が醤油差しの毒味をしようと手を伸ばした。
「須田っ無用じゃ」
意外にも陸奥が制止した。毒殺を中止した本人としては、論理的に無駄な事だと思ったのだろう。
坂本龍馬は怪訝な顔をして、陸奥を見た。
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