ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
完結
発行者:武上 渓
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ジャンル:SF

公開開始日:2013/12/17
最終更新日:---

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ソングライター ホシオカ ー陸奥篇 第4章 近江屋決行
軍鶏と野菜の入った籠を持った橋本久太夫を先頭に、小谷耕蔵 陸奥 久利坂と近江屋に向かって、河原町を北上する。通りはエエジャナイカと言いながら練り歩く人々に押されて、端を歩かなければならなかった。この人混みは、新撰組や京都見廻り隊から4人を紛れさせて、都合が良い。
そこに、少年が角樽を持って追いついてきた。橋本が振り返った。少年が澄んだ声で呼び掛けた。
「橋本様。酢屋からお頼みの物です」
「菊屋の峰吉かぁ持ってきたな、ありがとよ」
少年は醤油樽を橋本に差し上げた。
「悪いが近江屋まで持って行ってくれるかい?」
「いいよ」
陸奥が疑問を口にした。
「近江屋は醤油屋だ。しかも、軍鶏鍋ひとつに一樽は要るまい?」
「軍鶏を漬け込んだ特製醤油だ。旨くて驚くぞ!久太夫軍鶏鍋は病み付き間違いない」
そう言って豪快に笑った。


陸奥が近江屋の戸を叩き、護衛の藤吉が顔を出した。一同の顔を確かめると、そのまま二階に来客を告げに上がって行った。最後に醤油樽を持った菊屋の峰吉が入って戸を閉めカンヌキを掛けた。店の者は誰も出てこない。
久利坂は異様な空気を感じた。
-近江屋も仲間か?それとも奥から出ないように言われているのか?
久利坂を残して、陸奥達は階段を登った。菊屋の峰吉が醤油樽を持って、台所に入って行く。土間から上がった板の間には階段が続いている。上の表八畳間では藤吉が楊子を削っているはずだ。ほぼ定説の近江屋だ。展開はまるで違うが…。久利坂が上がらずにいると、峰吉が醤油差しを持って出てきた。樽から移し替えたらしい。
「私が持ってゆこう」
久利坂がそう云うと、峰吉は醤油差しを差し出した。
「もう遅い。お帰り」
峰吉は台所に戻って醤油樽を持って出てきた。そして商人っぽいお辞儀をすると、出て行った。久利坂は戸を閉めてカンヌキを掛けた。
久利坂は、ゆっくりと近江屋の二階に醤油差しを持って上がった。そこは、犯行現場になるはずの場所だ。まだ犯行は…起こっていない。
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