ソングライター ホシオカ ー陸奥篇
第1章 ープロローグ
「…ふぅ」
稲沢は1m程掘り下げられた四角い穴の中で、刷毛を使って人骨の土を払っていた。
この人骨の人物は、約140年前に肺炎で死亡した。特徴は、新撰組の3番隊隊長で、いわゆる武勇伝の中の幕末ヒーローだ。
学生の稲沢には、篠ノ井教授の意図が理解できない…井上源三郎の墓から何を掘り出そうと云うのか?教授の気まぐれに振り回される毎日だ。
-ペリッ
刷毛が何かを引っ掛けた。
見ると角が、親指と人差し指の骨の間から出ている。
「紙?質感が違うな」
稲沢は1cm程露出させた。
「プラスチック?」
刷毛で起こして見た。
「なっ!これはっ!」
這いつくばるように稲沢は、梯子を駈け登った。
1