手のひらの上のファンタジー
手のひらの上のファンタジー
アフィリエイトOK
発行者:真野まきや
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2012/11/28
最終更新日:2012/12/04 20:46

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
手のひらの上のファンタジー 第1章 手のひらの上のファンタジー
~ゆきじかん~


【第一話/雪の朝】



雪が、たくさんつもった朝でした。


マキオは、洗面台にむかい、歯をみがいていました。


ガラスにうつる、じぶんの顔をのぞきながら、シュッ、シュッ。


とくいの、お母さんからおそわった、みがきかたです。


これでやると、とても歯がきれいになるんだそうです。


口から、白いチューブがあふれそうなので、ぺっ、と、ながしにはきだしました。


あらいたての、チューインガムのようなにおいがしました。


「マキオ、おそとは雪がいっぱいだからね。あたたかくして、はやめに家をでなさいよ」


お母さんが洗面所に顔をだしました。


と思うと、すぐにいなくなり、バタバタとスリッパの音だけが台所のほうへ、とおのいていきました。


あと30分たったら、もうマキオは学校へいかなくてはなりません。


あまり時間がないなあ。


マキオはそう思うと、いそいで口をゆすぎ、そわそわと顔を洗いました。


洗面台のよこの、ちいさなくもり窓には、雪ごおりのかたまりが、てんてんと、くっついています。


マキオは近づいていって、雪ごおりのかたまりを、よく見ようとしました。


すると、とつぜん、窓に大きな影がうつり、外でものすごい音がしました。


どうやら、屋根の雪がおちたようです。


マキオはあわてて、台所へかけこんでいきました。



***


やきたてのトーストに、マーガリンとオレンジジャム。


マキオのお母さんがていねいにぬっていきます。


アツアツのあまい香りのトーストが目の前におかれると、マキオは犬のデラーラのように、トーストに鼻をちかよせ、おもわずくんくんかいでしまうのです。


「おぎょうぎがわるいから、やめなさい」


というマキオのお母さん。


あきれるくらい、このやりとりは毎日のことで、お母さんのなかのもう一人のオニババアが、すごい目でマキオをにらみます。


かまわずに、マキオはトーストを食べだしました。


ひと口かじれば、マキオの頭の中に、しろつめくさの野原がうかびあがります。


ふた口かじると、春の日の、地面を横断しているかたつむりの姿がよみがえってきます。
3
最初 前へ 1234567 次へ 最後
ページへ 
TOP