みぃつけたぁ
第1章 序章
いち、にぃ、と琴美が空き地の真ん中で数え始めた。
琴美と同じところに隠れると絶対に見つかってしまう。だから、洋子は一生懸命に考えて、絶好の隠れ場所を探して琴美に「降参」と言わせるための場所を探した。
さん、よん・・・でも見つからない。あるのは少し幹が太めの大きな木と、大きな石と、何とかすれば身を隠すことができそうな穴だけだ。・・・どうしよう。このままじゃ、隠れることもできないまま琴美に見つかってしまう。琴美を驚かせたい、琴美に尊敬されたい。
ろく、なな、はち・・・
考えている暇は無いと洋子は一目散にそこへ走った。そこへたどり着くや否や身を低くし、口を手で押さえて呼吸を最小限にして少しでも音を抑える。目を瞑って必死で気配を隠す。
琴美の声がやんだ。数え終わってきっと洋子を探しているところなのだろう。ここからが勝負なのだ。ここから何分後に琴美が根を上げて「降参」というか、5分後なのか、それとも10分後なのか。
目を瞑ったまま洋子は数を 数え始めた。たしか60秒で1分なんだから、300秒数えたら5分なのだ。300秒数え終わったら、一度目を開けて様子を伺おうと洋子は考えた。
しかし、数え始めて50秒目の出来事だった。
「洋子ちゃん、みぃつけた」
背後で誰かの声がした。とても陰気で暗い声だった。男でもなく、女でもない声で子供なのか大人なのかも洋子は判断できなかった。そして自分の名前が呼ばれているとは思わなかったので、目を瞑ったままじっと体を硬くして様子を伺った。
ポンポン。と肩を叩かれた。そしてもう一度、「みぃつけた」という声がした。
洋子はふと考えた。私は一体、どこで誰と何の遊びをしていたのだろうか。・・・たしか琴美とかくれんぼをするために学校の帰り道にある空き地へ忍び込んでかくれんぼをしていたのだ。
だから、自分を探しているのは琴美のはずなのに琴美の声ではないのだ。琴美の声はもっと可愛らしくて、そしてとても繊細な声なのに・・・一体、私を見つけたのはどこの誰なのだろうか?洋子はとうとう好奇心に勝つことができず、目を開け、手を離し、後ろを振り向いた。
「ようこちゃん、・・・・みぃつけたぁぁぁ」
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