みぃつけたぁ
第3章 第1部―始まり―
「その・・・いとこ、し、親戚が・・・行方不明になってな」
「行方不明?家出?」
「うん、たぶん・・・今のところ、それが濃厚みたいやねんけど」
「それ以外って・・・もしかしてさ、誘拐って事か?」
山田は「誘拐」という言葉に思わず反応し肩を震わせた。田中は失言だったとすぐさま「ごめん」と呟き、安易に言い過ぎたと謝罪した。
「もし家出なら、親戚が行くようなあてはあるんか?」
「わからない」と山田は首を横に振りつつも、趣味が同じで気が合う女の子だった。うぬぼれる様だが好かれていた風であったから、万が一の場合は自分のところへ尋ねてくるのではないかと田中に説明した。山田がひとつひとつ順を追って説明している間、田中はずっと眉間にしわを寄せて何かを見つめていた。
いや見つめていたというよりも、何か別のことを考えているのだろうか?田中が何を考えながら話を聞いているのかが気になって仕方が無かった。そして、山田が一生懸命に話をしているのに趣味のことやもしくは別の女の子のことを考えているのかもしれないと思うと、その綺麗にセットされた髪の毛をかきむしりたくなるくらいに胸がざわついた。
山田が母との会話や親戚の女の子の普段の様子など、覚えている範囲でのことを話し終わる頃、田中も肩の力を抜いて先ほどよりも優しい顔をしていた。どうやら他の事を考えていたというわけではなく、山田の話を真剣に理解しようと聞いてくれていたから難しい顔をしていたのだろうと理解した。
「あ、あの・・・た、たなか?」
「ああ、あのさ。俺も聞きたいことがあるんやけど」
聞きたいこと?と山田は田中からの意外な言葉を鸚鵡返しに呟いた。そして、田中はゆっくりと右手を胸の位置にまであげて、そして山田の直ぐ後ろを指して言った。
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