取り残された乙女たち
第10章 第10章 切り裂かれた白衣
男は着替えてきた少女二人を満足そうに眺めた。
前に立ち、十八歳の乙女たちを穴の空くほど、代わる代わる見つめる。
身長は同じくらいで、体型も似たような感じだが、印象は随分違っている。
麻由は目元に愛嬌のある、かわいらしいタイプだ。
一方千里は唇が薄く、どこか表情にツンとしたものがある。
こうした格好をしていると、どう見ても本職のナースと見分けがつかなかった。
男はまず千里を空き部屋に入れ、外から鍵を掛けた。
一人ずつ相手にするつもりなのだろう。麻由だけを伴って診察室に入った。
かちゃり、とドアを閉めると、男は本職の医師のように少女を診察台に寝かせた。
怯えた目をする麻由の顔を上から覗き込む。
十八歳になったばかりの少女の瞳は、ほんの少し茶色が勝っている。
まつ毛が人形のように長かった。
そしてかすかに産毛の浮いた鼻。
ピンクのリップクリームが塗られた唇は、わなわなと震えている。
彼はその唇に指を近づけた。すっと人差し指を這わせ、下唇を軽くめくる。
美しい歯並びと歯茎が覗けた。
こちらを見上げる瞳は、怯えの色を濃くしている。
「怖いか?」
診察台に横たわるナースは、小さくこくんと頷いた。
「他の連中はどんなことをしてるか知らねえが……俺たちは、ここでしかできない遊びをしような」
真っ白な頬を撫でながら不敵に笑う男に、麻由はか細い声で哀願する。
「お願いです……痛くしないで……」
「大丈夫だよ。体を切ったり縫ったりなんてのに興味はねえから。その代わり俺は薬物に詳しくてね。こんな田舎の診療所でも、さすがに薬局じゃお目にかかれないものが並んでるって感動してたところだ」
そういうと男は体を捻り、透明なシャーレーを手に取って、横たわる少女に見せた。
明らかに何かを混ぜ合わせたようなクリーム状のものが入っている。
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