蛮勇割拠
蛮勇割拠

発行者:青島龍鳴
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2012/10/09
最終更新日:2012/10/23 20:48

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蛮勇割拠 第1章 魔剣士と二人の王
姫は苦もなく捕縛された。
石造りの湿った地下牢に
手首に枷と鎖を繋がれ
せめてもの情けだろうか
座れる高さで石壁に吊られた。
いかに淫獣な愚帝でも
魔剣士を妾にする器はない。
この大陸世界において
いかに魔剣士が怖れられるか
それを暗示する事実といえよう。


囚われの姫君を
訪問する客があった。
あの褐色の魔剣士だ。
「チョイと邪魔をさせてもらう」
格子につけられた扉の上に
額をしたたかにぶつけては
さすりながら男は入った。

今度は上体をはだけずに
衣を肩まで掛けていた。
なるほど戦の場においては
体の輪から剣を抜くのに
上体の衣は邪魔だろう。
戦場になるとこの男は
身を守れる衣を脱ぐのか
つくづく奇妙な剣士だと
姫はいまさらながらにおもった。

「お嬢ちゃん、お名前は?」
なんともはや不躾な文句に
姫君は腹を立てた。
卑しくも一国の姫に
お嬢ちゃんとはなにごとだ。

「人に名を聞くときは先に自ら…」
姫君の決まり文句に
「オレは“ガリンジャ”というものだ」
男は言われ切る前に答えた。
「ヨーコ・カエツ…」と名を告げた。

ヨーコ姫は知っていた。
これは確認であることを。
王の従者でありながら
姫の名を知らぬ道理はない。
つまるところ名を聞いたのは
身代わりに魔剣士を送ったのか
属国王家たろうものが
代々魔剣士だったのを
隠していたのか確認するのだ。
適当な名を挙げることもできたが
その場しのぎにしかならないことを
馬鹿でない姫は知っていた。

「…私を殺してくれないか」
ヨーコ姫は覚悟していた。
「私は失敗したのです。
カエツ国が隠してきた
秘密の露呈をオマケにして。
カエツ国はおしまいだ。
私は国を滅ぼした。
生き恥を晒すくらいなら
このままこの場で殺してくれ」
麗しの姫は言い切った。
「なんだわかってやがったか」
ガリンジャと名乗った男は
瓢箪から水を飲みつつ
動揺もせずに返答した。
唇に通した輪の隙間から
一滴の水が溢れた。

「しかし、わかってなぜやった?
国が蹂躙されたからか?
豚の嫁にはなれないからか?
人民を見て義憤にかられた?
いずれにせよ愚かなことだ」


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