蛮勇割拠
蛮勇割拠

発行者:青島龍鳴
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ジャンル:ファンタジー

公開開始日:2012/10/09
最終更新日:2012/10/23 20:48

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蛮勇割拠 第1章 魔剣士と二人の王
国を治めていたのは
愚帝と謗られる王様で
豚のように肥え太り
豚のように醜い顔で
豚のように卑屈で卑怯
豚のように愚かな頭。
それはもう豚だという悪評も
言を封された人々には
心の中にしまうしかない。

愚弟の横暴は今日も止まらず
小さな属国の姫君を
妾に迎えるためだけに
城下町の門の傍
金を凝らした馬車に乗り
涎を垂らして待っていた。

普通ならば妾ごときを
迎えに出るなど沙汰の外。
噂に高い可憐な姫のこと
待ちきれずに欲望に
従ってしまうあたりなど
豚と形容されるに相応しい。

庶民たちはいい迷惑で
王だけに迎えをさせてはならぬと
着るものも揃わぬままに
貧しさと戦う激務の間を割き
表に出て平伏させられた。
貧しさに病に倒れた者さえ
面子だけのために呼びつけられ
額を地につけさせられたまま
絶命する者も出るだろう。
噂の姫君を乗せた馬車は
豚を一時間と待たせなかった。

小国にしても従者は少なく
たった三人いるばかり。
小さな馬車は精一杯の
贅を凝らしたものなのか
桃色の薄絹と
造花の飾りで妖艶さを
懸命に醸し出していた。
馬車の中で男が叫んた。
おそらく豚の汚い涎が
付き人にでもかかったのだろう。

ほどなく馬車の歩みは停まり
噂の姫が顔を覗かせた。
肌が透けて見えるほど薄い絹に
包まれたその顔は
噂に違わぬ愛くるしさ。
短い髪が顎にかかり
両の頬に墨を入れ
まだ幼さを残す細い肢体に
豚の涎は我慢できずに
車の底から滴った。

上目使いに様子を見た庶民は
姫の末路を憐れんだ
あんなに綺麗な姫が
嫁ぐには若い姫君が
豚の慰みものになるかと
心の底から憐れんで
拳は怒りで血が滲んだ。

豚と蟇の間の子が
馬車から顔をせり出すと
姫は凛とした声で叫んだ。

「暴虐奮う愚かな帝よ!」

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