天使と悪魔
第1章 1
「今日の所はこれだけだ。いつも通りSで行くなら、オススメは……て、あれ、相方はどうしたんだい?」
「今日は別行動。ちょっと別件の用事があるみたいで」
「そうか。じゃあ、たまにはAクエにするかい?」
「そうだね。その、盗賊と魔物退治受けていい?」
少女は1枚の紙を指差す。マスターがその紙をクエストボードから取り、少女へと渡す。
「お前さんなら大丈夫だと思うが、気を付けろ。これはSに引き上げるか迷ってた奴だからな」
「そんなに手こずるの?」
「ああ。これまで数人受けたんだが、男は種族問わず殺された。女は……行方不明だ」
少女の目つきが一瞬で変わった。天族自身、無意味な殺傷を嫌うが、少女は優しい性格ゆえに過剰に反応する。脳裏には盗賊に淩辱されている姿が浮かぶ。少女は頭を振り、考えを消し、装備を確認する。自分も二の舞に合うわけにはいかない。気を引き締めなければならない。武器である銃を取り出し、弾が装填されているか確認する。予備の弾丸も確認した。問題は無い。
少女はマスターに礼を言うと、町を後にした。久々の一人での仕事である。深呼吸をしながら、盗賊が出るという近隣の洞窟へと向かった。
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