STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
成人向完結
発行者:とりさん
価格:章別決済
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ジャンル:その他
シリーズ:STIGMA

公開開始日:2012/07/23
最終更新日:---

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STIGMA Side-Kurosaki Vol.1 第2章 1
「あ、こんにちは……」
 幸一はうつむき加減の上目遣いで、もじもじしながらやっとそれだけ言った。緊張や警戒心にもほどがある。彼は自意識過剰なのではないか、と一瞬、私は思ったが、どうも違う。彼には年相応の少年の愛嬌や人懐こさを表に出せないだけの、何か問題がある。原因は本人の生得的なものか、あるいはあのいろいろと高慢さが鼻につくわりに愚かな母親など、近しい大人が原因かは、まだわからない。彼は疑わしけに私をちらちら見る。
「幸一君、お隣だから、いつでも遊びにおいでって言ったのに、ちっとも来ないよね。おじさんさびしいな」
 そう言うと私は、思い切って、拒絶を覚悟で手を伸ばしてそっと幸一の頭をなでた。幸一は一瞬からだをビクリとさせたけれど、硬直して動けないようだった。
「……あの、でも、おじさん、お仕事忙しい……でしょ?」
 幸一は、ようやくぼそぼそとそれだけ言った。
「あれ、言わなかったっけ? おじさんは今、大学には週三日しか行ってないんだ。後のお仕事は家で、パソコンで本を書いたり、勉強したりだよ。けっこう家にいるんだ」
「でも……家でも、お仕事……」
 何とかして話を切ろうとしている。だが逃がすものか。私は幸一の頭に手を添えたまま、話を続ける。
「いつでもいいんだよ。夜中にお仕事することもある。夕方はね、けっこう暇だ。こうして、散歩したりしている。幸一君も暇そうじゃないか。ずっとこんな所で一人でさ」
 幸一は戸惑い、うつむいたりまた上目遣いに私をちらちら見たり。なぜ自分に私がこうも関心を持つのか、理解できないだろうな。凡庸な目立たない自分に、なぜ、と。
「よかったら今からうちにおいでよ。晩ご飯までに帰れば、大丈夫だろ?」
「え……あの……」
 幸一は一瞬目を大きく見開くと、またすぐうつむいて口をつぐんでしまった。しかし強いノーのサインはない。私は脈ありと見た。彼は本当は誰かの関心を引きたいのだ。優しくされたり、かまってほしいのだ。私はそう思うことにした。一つの賭けだが、私は幸一の手をそっと握った。拒絶はない。その手を引いた。幸一は私についてくる判断をした。いや、判断をしないままに、ただ流されたか。私についてきた。
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