STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
成人向完結
発行者:とりさん
価格:章別決済
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ジャンル:その他
シリーズ:STIGMA

公開開始日:2012/07/23
最終更新日:---

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STIGMA Side-Kurosaki Vol.1 第2章 1
 彼は一人でぽつんと、ただしゃがんで土をいじっているだけだ。遊びの約束がふいになったかして、暇なのだろうか。
 それにしても寂しげな背中だった。せつないまでに誰かにかまってほしくて仕方ないように見えた。そして私は少年のそういう姿が好きだった。私はゆっくりと、静かに、杖は浮かせて、幸一に近づいていく。
 春の陽光は急速に力を失いつつあり、半ズボンから出た幸一のむき出しの足は寒そうだった。きめ細かな白い肌がきゅっと引きしまり、体温を逃がすまいとしながら、誰かに、誰かにさすられるのを待っている。
「幸一君?」と私が声かけたのと、幸一がもう移動しようとしたのかふっと腰を浮かしたのがほぼ同時。彼は大げさ過ぎるほど、それこそ飛び上がるようにして立ち、ふり向き、下から上に私に怯えの混じった視線を走らせると、口をつぐんだまま、うつむいた。彼とのこの距離感は久しぶりだ。彼は驚愕と怯えから口もきけないようだった。
 私が怪物のように見えたわけではあるまい(だとすれば幸一は歳のわりにカンがよすぎる)、やはり極度の人見知りなのだろう。あまり誰かに声をかけられることにも慣れていない。だからどうしていいかわからない。
 私から見れば 単純に外見だけを見ても十分に愛らしく、さびしげな瞳や素振りが魅力的だとしても、一般的にぬいぐるみやペットと同列に男児がかわいいのは低学年くらいまでだ。今、新四年生、たぶん九歳の彼は、多くの大人から見て単に愛想のない凡庸で目立たない子供だろう。だから私のようにあえて接近してくる大人の存在に、幸一は戸惑うのだ。
「幸一君。こんにちは」
 私は腰をかがめ、彼のおどおどした伏し目のあたりに目の高さを合わせ、笑顔を作り、挨拶を繰り返した。これは親愛と認知のサインだ。特に幼い子ほど、こうした何気ない振る舞いが大きな意味を持つ。毎日ほど顔を合わせる親には必要なくても、赤の他人から親交を深めていくには、最初が肝心。どれだけ強く、相手の心をこじ開けて入っていけるか。慎重な様子見も大事だが、こんなチャンスの時は、最大限の強引さでもって、私は彼のこころをとらえてみたい。
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