STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
成人向完結
発行者:とりさん
価格:章別決済
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ジャンル:その他
シリーズ:STIGMA

公開開始日:2012/07/23
最終更新日:---

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STIGMA Side-Kurosaki Vol.1 第2章 1

 親二人に無理に押し出され、しゃがんで目の高さを合わせ笑みを送る私の視線をかわす彼は、そうとうな人見知りと思われた。
 私は人好きのする風貌はしていない(体格は人並みで、左足に障害のある私だが、明らかな年上でも頭から私に上から目線で接する人間はまずいない)が、かといってさほど警戒されるほど恐ろしげな外見でもない。外見だけなら、だが。この子はたぶん、初対面の大人なら誰にでもこうなのだろう、とこの時点では考えた。
 私はわざわざ、そんな彼の頭を、親愛をこめて撫でてやった。彼は一瞬びくっとしただけで、私のその行為を受け入れた。手を差しのべると、彼は自分の意思以外の何かに動かされるように、私の手を握ってくれたので、私はその小さな手を強く握り返し、ますますにっこりと微笑む。作為ではない。私は本当に喜んでいた。これから隣人となるこの少年とのファーストコンタクトは、まずまずの感触と言ってよかった。

 少年の名は幸一というそうだ。私は、
「幸一君か。よろしくね。これからはお隣同士だから、いつでも遊びにおいで」
 と手をゆるめながら語りかけたが、彼は視線を下ろし自分の手を見つめて、私の誘いには何ともこたえなかった。

  †

 あの日私はマンションの前の、猫の額のような狭い敷地の公園の花壇の前にしゃがんでいる幸一を見かけたのだ。
 まだ午後三時にもなっていない。さて、学校はどうしたのか、と寸時考え、ああ、今日は土曜日だった、と気づいた。私は大学の非常勤講師をしているが、週三回だけで、あとは自宅で著述の仕事をしていることが多い。一般的なサラリーマンほどには、曜日の感覚がない。

 最初の挨拶以降、なかなか彼に接近するチャンスはなかった。彼は夕方までどこかで遊んでいるか習い事でもしているのか、早くは帰ってこないし、帰宅したらしたで家から出てこない。親のいない時間は長いようだったが、まさかこちらから「幸一君、遊びましょう」などと言って呼び鈴を押すわけにもいかない。たまに近所で見かけても、どうも彼は私を避けているらしかった。

 これは千載一遇のチャンス。もちろん隣同士であるからには、いつか訪れるべきチャンスで、遅すぎたくらいだった。私は衝動を抑えながら、まず遠くから彼を観察した。

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