STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
成人向完結
発行者:とりさん
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:その他
シリーズ:STIGMA

公開開始日:2012/07/23
最終更新日:---

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
STIGMA Side-Kurosaki Vol.1 第4章 3
 私は真剣に怒り、真剣に幸一に同情した。
 私は幸一をそっと抱きよせ、顔を彼の顔のそばに寄せて、
「これからは、あんまりひどいことをされたら、おじさんに言うんだぞ」
 と小さな声で穏やかに言った。
「おじさんが頭を使って、そういうこと、できないようにしてあげるから」
 ともつけ加えた。幸一は涙に潤んだような目で私を見て、笑った。そうだ。彼を傷つける者は私だけでいい。幸一は私のものだ。

 幸一の母親の親としての振る舞いは、弁当の件だけとっても異常の領域だった。私は幸一とあの両親は血が繋がっていないのではないかと考えた。実子でも虐待されるケースはいくらでもあるが、経済的に裕福な部類の家庭としては、やはり常軌を逸している。幸一は「本当のお母さんじゃない」ということはすぐに認めたが、詳しい事情を話したがらなかった。それもえらく頑なだった。
「言ったらおじさんは僕を嫌いになると思うから、絶対言えない」などと言う。
私は「そんなことはない。約束するよ」と優しく言ったが、それでも、というより珍しくその言葉につっかかるように、幸一は「どんなことを言うかわからないのに、どうしてそんな約束できるの?」と強く反発した。
 私は幸一の横に座り、頭を撫でながら言った。
「幸一がどんな子かは、幸一の顔とか表情とか、言葉とか、態度や振る舞いにに、いっぱい出ていて、私はそれを感じ取れる。私だけの力じゃなく、人に強く興味をもって、一緒にしゃべったり遊んだりして楽しく過ごせば、誰にだって感じ取れる。もちろん全部じゃない。幸一だって私のことをいろいろ感じ取っているだろう? 私がどんな生き方をしてきたかなんて、一言もしゃべったことはないのに、毎日のように遊びにくるのは、なぜだい? 私が誘うから嫌々か?」
 幸一は慌てて首を振った。
「ううん。ぼくが行きたいって思うから行くの。おじさんといると楽しいから。ぼく、おじさんが好きだから」
 好きだから、という直接的な言葉を聞いたのは、これが初めてだ。私は……私は人を愛せないし、彼にそんな言葉を聞かせる気はない。これから作っていこうとする二人の関係と矛盾する。
 私は幸一を抱きよせた。
28
最初 前へ 25262728293031 次へ 最後
ページへ 
NIGHT LOUNGE5060
TOP