STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
成人向完結
発行者:とりさん
価格:章別決済
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ジャンル:その他
シリーズ:STIGMA

公開開始日:2012/07/23
最終更新日:---

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STIGMA Side-Kurosaki Vol.1 第4章 3
 初めて幸一を部屋に招き入れた日から、二ヶ月ほどが過ぎた。梅雨が明けた。

 私と幸一は私の家で遊んだり、禁断の行いを行うばかりではなく、様々に交流を深めた。春の気候のいいうちは、近所をよく散歩した。左足の不自由な私は、本当は今は杖はお守り程度のもので、杖なしでも歩くくらいはできるのだけど、幸一に杖を持たせ、私は幸一の手を握り並んで歩いたりした。手を繋いで二人で歩くところは、仲睦まじい親子にも見えただろうか。戸外では禁断の行為はもちろん、年齢不相応な過度なスキンシップ(傍点)もしない。寝転んで抱き合ったり、膝の上に抱いたりは。それは二人だけの秘め事なのだ。
 休日の午前中、二人で弁当を作って、私のステーションワゴンで大きな森林公園に出かけたこともある。幸一は不器用ななりに料理のレパートリーを増やしていて、私とともにしばしば料理を楽しんだ。こんな私との疑似親子のような関係は、幸一にはかけがえのないものになっていた。
 二人で弁当を食べている時、幸一が不自然にうつむいて元気がないのに気づいた。子供は感情を隠すのが大人ほどうまくはないものだ。本当は幸一は子供らしい子供だった。ことに私の前では幼すぎるほどに。
 私がどうかしたのかと訊ねても彼がますますうつむいて答えないので、迷ったが(もう何かを焦る必要のない二人の関係ではあった)、殺し文句で少し突っ込んでみることにした。
「せっかく仲良くなったのに内緒にされると悲しいな」と私は言った。
 涙ぐんだような幸一の目が泳いで、私は何か胸が締めつけられるような感覚を味わった。私らしくない。それでも私は続けた。
「どうしても言えないことなら、いいけれど」
 突き放すようなその言葉の調子に、幸一は動揺を隠せず、それでもすぐに表情を引き締めて私を見て、そして話し始めた。 小学一年生の、初めての遠足の時だった。遠足だから弁当がいる。驚いたことに幸一の母親は夕食すら自分の手で料理しないのだという。弁当など作ってもらえるはずがないと幸一は思った。だが弁当なしというわけにはいかない。空腹はもちろんだが、周囲から目立つのを、幸一は何よりもおそれた。だから思い切って母親に頼んでみたら、「そんなのわざわざ言わなくても、ちゃんと作ってあげるわよ」とあまり見たことのない笑顔で言うので、幸一は一安心した、のだが……。
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