STIGMA Side-Kurosaki Vol.1
第2章 1
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幸一にべったりとくっついて、私は存分に「スキンシップ」を楽しんだ。もっとも他人の目があっても問題の無いレベルだ。ただ普段幸一が他の大人に見せているであろうキャラクターや、四年生という年齢からすれば、ずいぶんな甘え方に見えるし、見る人に驚きを与えるだろう。だが彼は人目があれば絶対にこんな甘え方やじゃれ方はしない。
私も夢中だったが、幸一にとっても時間の経つのは早く感じられただろう。七時を回り、
一応、「晩ご飯、食べていくか」と誘ってみたが、さすがに彼は断った。今日はこれ以上無理押しする必要はない。彼よりも両親に不審がられたら痛い。
彼は読みたいマンガや本をたくさん選んでいたわけだが、もちろん一度に持って帰れる数ではない。そしてそれは、私にも好都合だった。
「一冊だけ、持って帰りな。それ返しに来て、また借りればいい。何回も言うけど、うちで読んでもいいよ。おじさんが暇なときに、一人で目の前で本読まれてもさびしいけど、仕事してる時なら、逆に好きなだけ本を読んで、一人でゲームしてもかまわないしね」
何度でも、遊びにおいで、好きなだけ宝の山を楽しめばいい、と私は誘いをかけている。その私の親切さに、幸一は素直な笑顔で応えられるようになっていた。
幸一が「私」をどう受け止めてくれたか、少なくとも嫌われてはいないにしても、警戒心の強そうな子だから、まだ十分には自信はない。しかしそこにあるモノだけでも少年にとって十分に魅力があるのが私の城だ。それに礼儀正しい子のようだから、本を借りっぱなしなどあり得ない。彼は少なくとももう一度ここに来るのだ。貸した本は約束手形みたいなものだ。
15
NIGHT
LOUNGE5060