先生は僕のもの
第1章 時間を止めて
――そして昼休み。
僕は誰よりも早く昼食を済ませると、職員室近くの廊下でじっと待っていた。ここで待っていれば、白いジャージに着替えた島原先生が職員室に入っていくからだ。
(早く来ないかな?)
そう思っていると、廊下の向こうから白いジャージ姿に着替えた島原先生が歩いてきた。
(よしっ!やっとこの時が来たぞっ!)
心臓が破けるかと思うくらい激しく動いている。
「ん?誰かを待っているの?」
「い、いえ」
島原先生は笑顔で僕に話しかけてくれた。この体が、これから僕の思い通りになると思うとフラフラと倒れそうになる。
(ああ。もうガマンできないっ!)
僕は、島原先生が職員室の扉に手をかけたところでスイッチを押した。一瞬してあたりが静かになる。そして、僕の目の前で職員室に入ろうとしていた島原先生の動きが停止した。
「や、やった。せ、成功した……」
扉に手をかけたまま動かない島原先生に近づき、横から顔を覗き込んでみる。すると、僕と話した後だったからか、微妙に笑顔を残した状態で固まっていた。開いた目は全く閉じようとせず、扉をじっと見つめている状態。
「先生? 島原先生?」
僕の呼びかけにも全く反応しない。完全に止まってしまっているんだ。
白いジャージに包まれた腕にそっと触れてみる。柔らかい腕の感触。こうやって島原先生の腕を掴んだことがあるのは、男子生徒の中で僕だけだろう。そんな優越感に浸った。
「島原先生……」
腕を掴んでも動かないことを確認した僕は、そっと後ろから抱きしめてみた。島原先生の体が僕の腕に包まれる。僕の顔が島原先生の背中に密着する。
――洗剤のいい香りだ。 ギュッと抱きしめると体の厚みが分かる。これで完全に抱きしめている。
そう感じた瞬間だった。
2
http://tira.livedoor.biz/