蜜事-私のお父様-
第3章 貴方だと、気づいていた
男は射精を終えると、満足げに大きく息を吐き出した後、私から身体を離した。
ペニスが引き抜かれた瞬間、たっぷり出された精液が膣口から勢いよく溢れ出る。
中に……出されちゃった。初めてだったのに。避妊してないのに。どうしよう、赤ちゃん出来ちゃう……。
頭が朦朧としていた。ぐったりした私をそのまま放置し、男が足早に部屋を出て行く音が聞こえた。
私は目隠しを取りもせず、それから小一時間ほど横たわっていた。動けなかった。
何も見えない世界の中、突然、バタンと激しい音が聞こえ、誰かが部屋に入ってくる気配がした。
驚いた私の身体がビクッと跳ねる。
「結衣!?」
聞き慣れた男の声がする。16年間毎日聞き続けてきた、慣れ親しんだ声。安心する声。
「お父さんん……」
必死に絞り出した声はか細く震えていた
私の身体が男の人の腕で力強く抱え上げられる。一瞬、また、あの匂いがした。
バリッという音と共に目隠しが剥がされ、世界がいきなり明るくなる。
真っ白な世界のまぶしさに目を細めると、私を見下ろすお父さんの顔が見えた。
「結衣、どうしたんだ!?何があった!?大丈夫なのか!?」
額から汗を流し、必死な形相で私を見ているお父さん。
その腕に抱えられたまま、私は気を失ってしまった。
でも私は知っていた。気づいていた。
今私を抱いている、この安心する腕は、私を襲った男のそれと同じだということ。
私をレイプした男は、お父さんだということ。
お父さんの匂いに包まれながら、私の意識は遠くなっていった。
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