旦那の目の前で犯される私
第1章 姿が見えない同僚
裕子はコンパで知り合った内塔鎮男と結婚した。二十五歳の裕子に対し、鎮男は三つ年上の二十八歳。お互いに一目惚れし、付き合い始めて三ヶ月というスピード結婚だった。
鎮男は小さな歯科を経営していて、どちらかと言うと裕福。幸せな生活を手に入れた裕子だが、職場で親しい仲だった沖村が結婚後も言い寄って来ていたのだ。
何度も断り続けたある日の会社帰り。裕子と鎮男が住む新築マンションに続く細い道は、夕焼け空が沈んで薄暗くなっていた。女性が一人で歩くには少し心細く感じる道で声を掛けられた裕子は、一瞬体を硬直させた。
「お、沖村君……」
「やあ。今、帰るところ?」
「待ち伏せしていたの?」
「いや、そういう訳じゃないんだ」
紺色のスーツ姿。右手には鞄を、左手には何やら怪しい薬のようなものを手にしていた。
「沖村君の家は全然違う方向でしょ。私に何か用なの?」
「今日こそマンションへ入らせてもらおうと思ってさ」
「だからいつも断っているでしょ。私はもう結婚したんだからダメなの」
「それはどうかな?」
沖村は手に持っていたカプセルを口に含み、水も飲まずに喉に押し込んだ。すると、スーツ姿の沖村の体が徐々に透けてゆく。
「えっ!?」
裕子は目を疑った。おそらく三十秒とは経っていないだろう。目の前に沖村の姿はなく、服だけが浮いているように見えた。
「ちょ、ちょっと……。お、沖村君!?」
(驚いただろ。今飲んだのは透明人間になれる薬なんだ)
「う、嘘……でしょ」
(嘘でしょって、俺の姿は見えなくなっただろ?)
空中から声が聞こえる。そして、服が自然に動き始めた。スーツが脱げ、地面に置かれていた鞄に入ってゆく。同じようにズボンやカッターシャツ、そして下着や靴までもが、まるで意思を持っているかのように動き、鞄に入っていった。
(これで完全に見えなくなっただろ?)
「し、信じられない……。こ、こんなことって……」
(あとは鞄を隠せば俺が何処にいるのか分からない)
透明な体になった沖村は歩道の横にある、生い茂った草むらの中に鞄を隠した。
「お、沖村君っ。何処にいるの?」
(ここだよ)
「きゃっ!」
不意に後ろから声を掛けられ、裕子は驚いた。
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