教室でカップルに……を、されてしまいました
第1章 え・・また?
視界の隅に、なんとなく見えてはいるのだけど、焦点合わずかなりぼやけているから、はっきりせず、もどかしかった。もどかしいというのは、少し言葉が違うか。わたしが、そういうのを見たいかのように思われてしまう。とにかく、視界の片隅になにやらがこそこそおこなわれているのが、どうにもじれったく感じてしまうということだ。
でも、それを顔を上げてはっきりと見てしまうのも恥ずかしくて出来るはずもない。死んでもそんなこと、出来ない。恥ずかしいし、気付いていることがばれてなにをされるか分かったものではないし。
それは当然こんな目と鼻の先でこんなことをして、気付かないわけがない。だから二人も当然、わたしが気付かない振りをしているものとして、こんなことをしているのだろうけれど。
だからって、こちらから、気付いていますなんて態度、絶対に取れるわけがなかった。
だって、そんなのを見ながら、どんな態度でいればいいのかなんて分からないし。
二人ともなにしてるのお、なんて気軽に話しかけられるわけないじゃないか。
おとなしく下を向いて、嵐が通り過ぎるのを待つしかなかった。
「う、ううっ、やばいやばいやばい」
武田の声に、春美がしごくちゅくっちゅくっという音のリズムが早まった。
ちゅっちゅっちゅっちゅっちゅっ、という感じになっていた。
え、え?
わたしはうろたえた。
まさか、
ここで……出す、つもりなの?
「うっ!」
武田の呻き声。
その瞬間、びぃっ、びぃっ、とわたしのノートの上に、なにかが勢いよく降り注いだ。
本当に、紙を打つ、びっという音がした。
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