教室でカップルに……を、されてしまいました
第1章 え・・また?
わたしの名前は村上史絵。
高校一年生だ。
今日も、文化祭の催し物企画担当として、放課後の教室に一人残っていた。最近連日だが、自分から立候補した係なのだから仕方がない。もう少しだけ、頑張らないと。
他に誰もいない、しんと静まり返った教室だけれど、でもわたしの作業はまったくはかどらなかった。
ここにいるとどうしても、昨日のことを思い出してしまうからだ。
武田新治と須本春美とのことを。
二人が、その……この教室で……いきなり……わたしがいるというのに……始めてしまったことを。
ちょっと考えただけで、顔が赤くなる。
いまだけではなく、授業だって、まったく集中出来なかった。
当人であるあの二人は、どうして普段通りに平然としていられたのだろう。もとから勉強に集中するつもりなどないからかも知れないけど、でもやっぱりわたしには信じられないことだった。
と、そんなことを考えていた時だった。
「だからそれはあ!」
「いいのそれで! 新治が間違ってるの!」
廊下から、武田新治と須本春美の声が聞こえてきた。
昨日と、同じだ。
わたしの身体はぴくりと震えた。
え?
まさか……
また……
ガラリと音がし、後ろのドアから武田新治と須本春美が入ってきた。
なにやら大声で楽しげに喚きながら、お互いの脇腹に肘鉄を食らわせ合っている。
二人はカップルである。高校入学早々に、付き合い始めたらしい。
既視感? と、そんな言葉が脳裏を廻った。二人が昨日のように、わたしの机の前に立ったからである。しらじらしく、さも偶然というように。
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