義弟の一言で狂った私の人生
第2章 分かれ道
抱き寄せられたままの体を、
必死にはがそうと腕を突っぱねるが、
無駄だった。
「彩子さんだって分かっただろう。」
再び強い力で引き寄せられ、
耳元でささやかれる。
「兄さんは君を一番には考えていない。俺なら。」
「俺なら、いつでも君を一番に考えるよ。」
囁きながら、
耳元をなぞるように生温かな舌の感触が触れる。
「君が悲しむことがないように。いつも笑顔でいられるように。」
悪魔のささやきのように思えた。
今まで必死になって抵抗していた力が、
一瞬にして崩れ落ちてしまう。
「彩子さん。大好きだよ。」
耳元でささやかれる優しい言葉が、
今は何より甘美に感じた。
抵抗しなくなったのを、
了承ととったのか。
久は、ゆっくりと彩子の体を
ベッドへと押し倒した。
久のやさしく温かい口づけを感じながら、
全てを受け入れるかのように、
ゆっくりと瞳を閉じた。
9