義弟の一言で狂った私の人生
第7章 2度目の交わり
それを、たとえ成り行きで
あったにせよ、
自分が何度も好きでもない
人間に抱かれると
思っていたのだろうか。
少しは久自身に対する
好意を考えなかったのだろうか。
「そうね、辛いわ。でも、あなた、一彦さんにも辛いことをしてるのよ。」
「それは、考えなかったのかしら。」
今まで真剣に
見つめていた久の瞳が、
フッとそれた。
「兄さん?」
「ああ、それは考えなかったな。」
つぶやくような低い声で、
視線は上の空に宙を見ていた。
「そんなことより、彩子さん。」
一瞬のうちに、
久は元の穏やかな表情に変わった。
その変貌に、若干の疑問と不安を抱く。
「皆が戻るまで、まだ時間があると思うんだ。」
彩子が羽織ったシャツの隙間から、
手を差し入れる。
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