甘い毒
第14章 ◆
私は冷静になって考えてみた。
もし、七原くんが現実でも本当に誰かを愛し大事に出来るようになっているとしたら…
私はどちらかと言えば嬉しいかも知れない。
七原くんのことが好きで仕方がなかった頃の私のことを愛して欲しかったけれど。
そうでなくても良い。誰かと幸せになれたならそれでも良いかもしれない。
私は少しほっとしてもいた。もう七原くんは昔のような、私を苦しめようとする危険な彼ではないから。
そう思っているうちにふっと目が覚めた。
彼の夢を見た日は、寂しくて居ても立ってもいられなくなる。
朝からの仕事の間も上の空だ。
一日を過ごして次第に夢のリアルさが薄れてくると、私は冷静な自分を少しずつ取り戻す。
その度に思い知らされるのだ。消えてくれない記憶にいつまでも支配されているということを。
そしてその日の夜もまた夢で会うのかなぁ、と考えながら床に就き、精神がすっかり消耗し切った頃にやっと意識が薄れるのだった。
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