【moral】 /BL
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成人向完結
発行者:鵺央
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/06/05
最終更新日:---

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【moral】 /BL 第2章 姉と義兄と、僕。
 姉は昔から恵まれていた。女の子を望んでいた両親は姉の誕生を諸手を挙げて喜んだそうだ。何冊も何冊も、分厚いアルバムに姉の写真が収められている。成績もよく、性格も明るかった姉を両親は自慢にしていた。それに引き替え僕は。中学を卒業した日、珍しく酔った父が僕は予定外の子供だったと漏らした。父は仕事仕事であまり家にいることもなく、僕は遊んで貰った記憶もなかった。母はいつも笑っているだけだった。父の言葉を聞いた夜、僕は悲しくて眠れなかった。僕の世界から父が消え、母が消え、そして何もかもが消えた。僕の世界には僕一人しかないなくなった。その時、僕と姉が10歳も歳が離れている理由を理解した。成績も人並み、特筆するような能力もない。引っ込み思案でろくに友達もいない。僕の子供の頃の写真もないわけではないけれど、小さな箱の中に整理されるでもなく詰められている。枚数なんか、姉の10分の1程度だ。子供の頃からなんでも姉優先だった。物心がついた時にはもう姉は中学生になっていたし、そんな余裕はない、と僕は家族に誕生会をやって貰った記憶もない。ねぇ、いらない子の僕でも、少しは愛してくれていた?

 僕にとっては忌むべき存在のはずの甥は何故か僕に懐き、それが一層僕の心を掻き乱した。甥の稔は一箇所だけ、僕に似ていた。笑うと両の頬に小さな窪みができる。笑窪。他の家族の誰にもない、僕の特徴だった。25も過ぎると親はしきりに僕に結婚を勧めるようになり、小学生になった甥は一人で遊びに来ては僕の部屋に居座った。結婚なんかできるわけない。僕は女性を愛せない。義兄を諦めようとあの晩見知らぬ男に体を預けたはずなのに、僕は未だ別の誰かの中に義兄の影を探しネオンの街を彷徨い歩いている。居場所のなくなった僕は新しい住所も告げずに、家を出た。

 予想通り、両親が僕を探している様子はなかった。結婚を勧めたのだって、厄介払いをしたかっただけかもしれない。そんな風に穿った見方をしてしまう自分に嫌悪感を覚える。僕はどうしてこんな卑屈な人間になってしまったんだろう。
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