【moral】 /BL
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成人向完結
発行者:鵺央
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/06/05
最終更新日:---

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【moral】 /BL 第6章 覚醒。
 元々自営業を営んでいた父が、経営難で会社を畳んで会社勤めを始めたのはまだ僕が2歳くらいのことだったと聞いている。40歳を超えていた父が一から仕事を覚え、慣れない職場で働くのは心労もあっただろう。土日もなく働いていて僕をどこかへ連れて行けるはずもなかったんだ。母もパートで働き始め、僕は保育園に預けられていた。写真が少ないのだって仕方がない。それでも、お遊戯会や運動会の写真はきちんと残っていたじゃないか。裕福な家庭とは言えない中で、姉と違って公立大学へ入学する程の頭のなかった僕を私立の大学にまで行かせてくれた。姉が両親の愛情を独り占めにしていると思っていたけど、そうじゃなかった。環境や状況が変わる中、それでも姉と同じように両親は僕を愛してくれていたのに、僕がそれに気付こうとしなかったんだ。父の言葉にショックを受けて、僕は耳を塞いだ。そして目を瞑った。聞くべき言葉も排除して、見るべきものも消去した。それ以上のショックを受けるのが怖かったんだ。僕の心はいじけたまま、14、5で成長を止めていた。


 勢いよく扉が開き、稔が飛び込んで来た。姉を押しのけるようにして稔は放心状態の僕に抱き付き、ぎゅうぎゅうと抱き締めて来た。
「お祖母ちゃん、電話口で泣いてた。よかった、って……春ちゃんが生きててよかったって……」
抱き締められて、包帯を巻かれた体のあちこちに痛みが走ったが、僕はそれを甘んじて受けた。両親がやっとの思いで産み育ててくれた僕を、勝手に消そうとした僕への罰だ。これくらいの痛み、どうってことない。両親は、もっと心が痛んだに違いない。必死に僕に抱きつく稔を姉が複雑な表情で見つめているのが、瞳の端に映った。
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