【moral】 /BL
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成人向完結
発行者:鵺央
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/06/05
最終更新日:---

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【moral】 /BL 第6章 覚醒。
「春……樹……」
フラフラと僕に近寄ってくると姉はいつだったか稔が僕にしたように、僕の首にしがみ付いた。鼻腔を擽る甘い香りを嗅ぎながら、何故姉は泣いているのだろう、と首を傾げた。穢れたものを見るような目で僕を見て、人でなし、とヒステリックに叫んだじゃない。汚いものなら捨てればいい。できそこないなら、最初から生まれて来なかったことにしてしまえばいい。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
肩口で姉が小さく震える声で僕に謝罪の言葉を繰り返す。別に姉さんが悪いわけじゃないのに。
「俺、お祖母ちゃんに電話してくるから……」
すんすんと鼻を啜りながら稔は部屋を出て行った。部屋にこだまする姉の泣き声、僕はそっと姉の背中に腕を回した。
「姉さんが悪いんじゃない。僕が全部悪いんだから……いらない子の僕が生まれて来たのが悪いんだから……」
生まれて来なければ、義兄を愛してしまうことも、姉を裏切って稔と関係を持つこともなかった。姉を苦しめたかったわけじゃないのに。姉さんが驚いたように顔をあげ、涙で濡れた瞳で僕を見つめた。
「いらない子、って本気で言ってるの?春ちゃんが海に飛び込んだって聞いて、お母さん倒れちゃったのよ?!お父さんだってすっかり衰弱しちゃって……」
そう言う姉の顔も憔悴して目の下には隈ができてる。目尻には皺も増え、髪には白いものも見えた。知らない間に、姉は随分歳を取ってしまったんだなぁなんて、どこか遠くの方で呑気に考えた。
「昔、父さんが言ったんだ。僕は予定外の子供だったって……」
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