神王~DANTE~ 【BL】
第5章 課題
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厩に着いた頃には、時計の針は七時を差していた。
カロンが自室から上着を羽織って大食堂に向かえば、予想通りに中は混雑していた。
上司の姿を見つけた隊員達は次々に「お疲れ様です。」と声を掛ける。
「タタラ、夕飯もテイクアウト頼む。」
「今忙しいんだ!適当に持って行け!」
言われた通り、並んでいる料理の中から適当にトレイに乗せて行く。
牛肉のソテー、マッシュポテト、ドレッシングを掛けた山盛りのサラダ、クロワッサン五つをそれぞれ乗せて、自室へと切り上げる。
トレイをテーブルに置いて、深い溜息と共にソファーに腰を下ろした。
昨日に続き、おかしな事に巻き込まれ始めている気がしなくも無い。
「〝神王〟には宿題出されるしよー…はぁ、近日中にまたウィリーの所にでも行くか…。」
溜まった仕事の事を考えると、近日中と言っても五日後になりそうだと、再度深い溜息が出てしまった。
「俺の幸せは当分来ないだろうなー…。」
クロワッサンに齧り付いた時、扉がノックされ、何枚かの書類を持ったセーランが姿を現した。
同時に、レオナードへ提出する〝神王〟に関する報告書類の作成もしなければと思い当たる。
「人の顔見てそれだけ気分降下させるのは、失礼ってもんじゃないでしょうか。」
僅かな怒りを滲ませたセーランの言葉を聞き流し、正面に座るように促せば、眉間に皺を寄せたまま指示されたカロンの正面に腰を下ろす。
その間も、結構な量の食事を胃袋に収めて行く。
セーランは気にする事無く、今日の報告を述べて行く。
「そう言えば、レオ総帥からのご伝言があります。」
「あ?」
「来週、ルディアナ妃がお越しになられるそうですよ。」
「ぁあ!?ディアナがか!?」
「ルディアナ妃、です。」
鋭い睨みと共に釘を刺されてしまう。
皇帝の第二夫人であるルディアナ・リヒャルド妃は、〝魔呪力(デモニア)〟に偏見を持たないカロンの幼馴染である。よく言えば天真爛漫、悪く言えばじゃじゃ馬と称されるだろう。
公爵の娘で、以前は月に一度は特殊部隊の宿舎に顔を出していたのだが、皇帝の第二夫人になってからは年に二回程しか訪れる事が無かった。
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