神王~DANTE~ 【BL】
神王~DANTE~ 【BL】
成人向
発行者:仁蕾
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/05/29
最終更新日:2010/07/31 17:07

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神王~DANTE~ 【BL】 第5章 課題

 溜息混じりに呟いた時、不意に周囲の空気に違和感を感じた。
 強い視線を感じる。顔を上げた時。濃い闇を背負った白銀の煌きを捉え、ヒュッと喉が鳴った。
 風を纏う白い虎。その背に腰を下ろすのは、白銀を纏う青年。同じ色の目が、無慈悲に見下ろしている。しかし、その口元には愉快そうな笑み。
 肌が粟立つ。視線の先の誘う様な甘く芳しい花に。
 何かに囚われたかの様に、手足が動かない。否、全身が動こうとする意思を拒絶する。


「愚かな人…。」


 青年の声が朗々と響いた。張り上げている訳でもないのに。


「我が身を天に捧げたいか?」


 傲慢でいて、尊厳。
 無垢でいて、凄艶。


「あ、貴方は…〝神王〟。天に御座(おわ)すべき存在。故に、森羅万象は満ち行く。」

「愚かなる人間達は、〝我等〟の真なる望みを裏切る。故に、玉座から退いたは道理。」

「望み…?全てを制する貴方が、何を望むと言うのですか。」

「…その答え掴みし時、お前は〝我等〟の絶望を知るだろう。…〝神王〟は、既に世に不要なり。」


 青年は僅かばかりの寂寞を笑みに乗せ、その姿は風に浚われた。


「望み…絶望…〝神王〟が世界に要らない存在、だと…?」


 カロンの視線は未だに上空を見上げていた。
 その時、肩に微かな痛みを感じ、目を向ければ満足そうな顔をした仔馬が、不思議そうな表情をしてカロンを見上げていた。


「あ、ああ…もう良いのか?じゃ、戻ろう…。」


 カロンと仔馬はゆったりとした足取りで、厩へと向かう。
 しかし、カロンの胸中は焦燥感で埋め尽くされていた。
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