神王~DANTE~ 【BL】
第4章 遊戯
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青ノ滝から何千kmと離れた位置にある風の渓谷。深い絶壁の途中の岩場にある洞穴。
僅かな足場に光の粒子が集まり、人の形を成すとポウンと柔らかな音を立てて弾けた。
そこにはシェオルと人型になった羅雫、そして同じく人型になったクレアの三人が立っていた。
『お寝坊小僧は起きてるかねー。』
『遊羅だもん、起きてるわけないよ。』
ふん、と息を荒くする羅雫に、シェオルは苦笑を禁じえない。
足を進め、洞穴の中へ入って行く。広い鍾乳洞。洞内は闇に隠されている。
「遊羅?」
鍾乳洞内にシェオルの声が響くと、唸る様な風の音が奥の方からこちらに翔けて来る。風の塊がシェオルの正面で渦を巻き、逞しく太い足が地面に着いた。そこに立っていたのは、純白の毛皮に覆われ、黒の縞模様をあしらえる翡翠の目をした雄々しい大きな白い虎。グルグルと低く唸る姿は恐ろしさを助長する。
が、白い虎は甘える様にシェオルの腹部に頭を摺り寄せた。
「起きてたんだね、遊羅。」
シェオルの言葉に、遊羅と呼ばれた虎はきょとりと瞬くと、首を数度横に振った。
『シェオルの声で起きた。』
ザラリとした舌が、頭を撫でていたシェオルの掌を舐めた。
『ちょっと、遊羅。そのデカイ図体、どうにかならないの?』
クレアの苦情に、遊羅は「ゴメン。」と素直に謝罪をすると、軽い音を立てて人の形を取った。腰まである波打つ白の髪に、少し垂れ気味の翡翠の瞳。その顔は精悍な男の顔立ちをしているが、中身はほんわりとした男である。身長は一九〇はある。
『どっちにしても、デカイ図体に変わりは無いね。』
羅雫が溜息混じりに呟けば、クレアは溜息を付き、シェオルは苦笑を浮かべた。
遊羅はシェオルの体を、自分の腕の中に閉じ込めた。
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