春夏秋冬 Ⅱ
春夏秋冬 Ⅱ
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛
シリーズ:春夏秋冬

公開開始日:2012/05/27
最終更新日:2012/07/12 19:23

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春夏秋冬 Ⅱ 第2章 歌と花と
貴族の子弟である俺や橘でさえ気づかなかった。だけどまさか、皇族がこんな花街の隅に一人で酒を飲みに来るとは誰も思わないだろう。



「あの店はいい店だったよ。
とても食事が上手くて、いい酒を置いていた。目の醒めるような美人の歌手もいたし」


すぐ傍で、にんまりと微笑まれて、自分の頬も弛んだ。


見え透いたお世辞ほど、何故かくすぐったくて嬉しかった。
弥生様の正体を知ってしまった今でも。


「酒はちゃんとソムリエがいて管理していました。食事はまさかのケータリングです」



「‥お互い、あの店には素性を隠して通っていたわけだ」


「はい」


そう、嘘を付いていたのはお互い様だ。



「‥‥もう、会えないね」


「はい‥」


会い続ければ近い将来、困ったことになるのは明白だった。


シャレにならない。
一大都市である万葉を治める月白家の息子が、皇太子と愛人関係にあるなど、許されない。

兄上や父上に迷惑はかけられない。ましてや、この人の今後に傷が付いてはいけない。


もう、会えない。



「皓、泣くな、」


「はい」

言われてから、ああ俺は泣いてるのかと気が付いた。
もう、弥生様とは会えないんだ。


「会えないけど、
きっと君はこれからいい男に育つ。
いつかきっと君を必要とする人に出会う。だからね、自分のこと大切にするんだ。
もう、無闇やたらと、誰かに付いていっては駄目だよ」


優しい手に背中を撫でられて、心のタガが外れると涙と一緒に泣き言が溢れてくる。


「嫌です。寂しいから」


寂しい。
兄もいない、弥生様もいない。
俺はきっとまた、夜の街をさまようだろう。


「寂しくない。
君には友人もいるし、大切な家族もいる」


「大切な家族じゃない。
俺は万葉で暮らしたかったのに。
兄上と一緒にいたかったのに、歳の近い男兄弟がいるのは面倒事になるとか言って、父は俺のことを追い出したんだ。
その癖、あれは駄目これは駄目ってっ」
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